◎今月の視点 「期待」と「失望」は紙一重。弱者へ一刻も早い支援の手を

例年のこととはいえ、酷暑である。40度前後の日中は外を歩いているとクラクラする。

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処分予定の仮設住宅の寄贈計画 ハードルが高い地方への移設

例年のこととはいえ、酷暑である。40度前後の日中は外を歩いているとクラクラする。今年はエルニーニョの影響で、過去最高気温になるとの予想もあり、この国最大のイベントである今月中旬の「水祭り」には驚愕の暑さになるかもしれぬ。
 ところで、昨年から一般社団法人 日本ミャンマー文化経済交流協会(JMACE)では、宇野治会長の肝いりで、昨年の水害でいまだに苦しんでいる人々に、日本の仮設住宅を移設寄贈するプロジェクトが進行中だ。2011年3月の東日本大震災で被災した東北の方々が、ここへきてようやく我が家に戻り、新居に移り始めたので、じつに数万戸にも上る仮設住宅が不要になり、処分が検討されていた。しかし、風呂、エ
アコン、水洗トイレなどが装備されたこの
仮設住宅を廃棄するのはあまりにも忍びなく、宇野会長が東北の首長と掛け合い、寄
贈先があるならば無償提供というご承諾をいただいた。
 弊紙ではこれまで何度か既報したが、JMACEでは2013,14年と2年続けて、日本で役目を終えた消防車20数台と新中古のホース3千本を、ミャンマー内務省を通じて全国の消防署に寄贈した経験がある。
 ひと口に寄贈といっても、これは手続きの煩雑さもさることながら、その後適正に使用されているかどうかまでを見届けなければならず、結構パワーがいる。しかも、輸送費や移設費用などはODAの「草の根基金」の支援が必要である。貴重な国民の税金を使うわけだから、寄贈の基本は政府対政府という形式で、この基金を使わせていただく以上、民間同士はできない。だから今回も在ミャンマー日本大使館のご協力を得て、仮設住宅を必要としている被災地域の州政府へまず寄贈という手順を踏むことになる。

復興遅れるチン州が有力候補地に 外国人の支援活動には限界が

では寄贈先はどこがいいのか。今、どの地域の人々が必要としているのか。ならば搬送は大丈夫か。州政府は協力していただけるかなどの、多くの事前調査が必要であ
った。そこで弊紙で連載をしていただいているテリー先生こと宮川照男氏に、被災者の復興が遅れているといわれるチン州への調査を取材を兼ねて依頼した。その模様は
今月号(P34)に掲載した。
 チンはミャンマー北西部、インドと接する山岳地帯で、唯一州都に空港がない辺境である。したがって宮川氏はバスルートを余儀なくされた。ヤンゴンからマンダレー経由で27時間というハードな行程であった。
 そうした過酷な旅を経て見た州都ハッカの現状は標高1,800mの高地だが、地盤がもろく、崖くずれで村ごと消失したケースも少なくなく、いまだにビニールの仮設住宅で暮らす人々が多いということだった。むろん、チン州政府も寄贈移設を熱望した。今回このチン州から副大統領が誕生したこともあり、中央政府もこのプロジェクトに関しては、異論をはさむことはないとの結論にも達した。
 しかし、宮川氏も書いているように、州都へ行く麓の町からのルートが問題であった。大型トラックが通行できるのかどうか、現状では何とかなりそうであったが、果たしてヤンゴン港から27時間もかけて搬送できるのか。何度も言うが、州都ハッカは1800mの山岳地帯である。
また、もう一つの難題も露呈した。移設組み立ては簡単だが、まだ電気がない場所が多く、エアコンなどの家電が機能できない可能性もあるということだ。

こうした様々な状況を考えると、このチン州へ仮設住宅を移設できるのか、ある
いは同じような被害が出ている隣のザガイン管区へまず先に行うべきか。JMACEでは、宮川氏の報告を受けて協議中であるという。いずれにしても、こうした地方への社会貢献活動は、すでに需要と供給元があるのに、これをつな交通インフラその他の難題を克服して初めてスタート地点に立つことができる。
 今ミャンマーでは、ローカルの村々で人々と協力し悪路を整備するNPO法人「道普請人」をはじめ、医療活動で支援を継続中の名知先生やジャパンハートのみなさん、あるいはこの10年間で、私財を投げ打って学校建設を続けている「ミンガラの風」代表の市村氏など、市民レベルの多くの日本人がボランティアで支援活動を行っている。ミャンマー社会に溶け込み、真の交流を深めていくにはこうした体を張った行動が必要だろう。その中からネットワークができ、本当にパートナーになるべき人間と巡り合えるかもしれない。
 ご承知のように、今月からNLD政権がスタートした。新大統領らリーダー誕生の経緯は特集(P40)に記したが、先月末の党首をめぐる2転3転の目まぐるしい動きは、正直言って異邦人の目にも、あまり見たくない光景に思えた。
 この政権は80%もの国民が支持して成立したことを忘れてはいただきたくない。少なくとも、支援を必要としている社会的弱者がまだかなり多く存在しており、そうした人々に一刻も早く新政権としては手を差し伸べることがその支持への期待に応えることではないだろうか。「期待」と「失望」は紙一重であるのだから・・・。

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