◎導│ミャンマーに貢献する日本人

ローカルを意識した居酒屋展開を夢見て アジアの中で直感的にミャンマーを選んだ

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植木 宏明 Hiroaki Ueki 「蓮」グループ代表取締役 REN Group President

和食店というより、大衆的な居酒屋チェーンとして在住邦人のみならず、ミャンマーローカルにも人気を博している「蓮」グループは、今、ヤンゴンで一番勢いのある邦人経営の飲食店である。現在、サヤサン通りの本店、ダウンタウンの「めんや鯉昇」やスターシティ店に加え、ミンガラドンにもローカル向けの飲食店を開き、さらに近々カンドージ湖そばにも新店をオープンさせる予定だという。
 2014年3月にヤンゴンで開業してからわずか1年間で4店舗、2016年現在でじつに、6店舗も系列店をオープンさせたこの「蓮」グループを率いるパワフルなリーダーが、35歳で独身という若き経営者の植木宏明氏である。
「今から3年前の2013年に東南アジアを旅し、ミャンマーにも立ち寄りました。もちろん 「蓮」の構想はすでにあったので、タイ、カンボジア、マレーシアなど自分のフィーリングやイメージに合う国はないか、そういう視点で各国を歩き回ったわけです。その中で、私の心をとらえたのがこのミャンマーでした。理由は色々ありましたが、これはもう私の“直感”のようなものでした。裏表がない日本人に似た国民性に惹かれたとでも言えるのでしょうか、まず人間性に大きな魅力を感じたことは確かです。 
 すでに故郷の岡山で居酒屋を中心とした飲食店を展開し、経験豊富な植木さんだったが、なにせミャンマーは未知の国。今でこそ邦人在住者や来緬者は増加しているが、3年前は日本人会登録者は400人前後だったと記憶する。10万を超す邦人がいる隣国タイとは状況が大きく異なっていたので、果たして勝算はあったのだろうか。
 「南国のオープンエアーの雰囲気の中で、気楽に飲んで食べて語り合えるお店を作りたかったんです。だから日本人だけをターゲットにするのではなく、ローカルの方々も楽しめる開放感のある店にすることを考えました。“居酒屋”というイメージをミャンマーにも定着させること、そうすればうまくいくのではと、密かに思っていましたよ。」

とは言っても事はそう簡単ではない。普通の経営者なら、まずよく市場調査をして、食材の仕入れやコストの問題などを吟味してからスタートするが、植木さんの場合は違った。初来緬から間髪を入れずに再訪し、居酒屋「蓮」の開業を即決した。驚くべき決断力だ。「ミャンマー人のいいパ―トナーに恵まれました。今思えばこれが一番大きい。だから店舗の場所選びもそう時間はかからなかった。サヤサンの1号店の土地は雑草地でした。でも前の通りは交通量は多いですが割と広く、開放感があった。だから見た瞬間”ここだ“と即断しました。」
 植木さんの動物的ともいえる嗅覚の鋭さと決断力の早さは、やや日本人離れしている。結果的に1号店は当った。特にミャンマーローカルのリピーターや常連が増えた。もちろん邦人の間では、仕事帰りに気軽に立ち寄れる居酒屋は評判を呼んだ。
 「しかし、やはり最初は大変でした。特に味のバラつきや、日本人とローカルの味覚の違いを認識するのに戸惑いました。例えば焼き鳥ならローカルは焦げ目が出るほど焼かないといけないが、日本人にそれを出すと“味が落ちたね”と言われてしまう。しかもローカルの方々は、濃い味付けが大好きですが、日本人の食文化とは違和感がある。色々と試行錯誤を繰り返しながら、味を定着させるのには苦労しましたね」

邦人の絶対数が少ないから、飲食店を成功に導くには、どうしてもローカル客を取り込んでいかなければならない。ヤンゴンの和食店経営者なら誰もが思っていることだが、一方にシフトすると、どうしても他方は逃げる。これを克服して繁盛店を作り上げた植木さんの経営的センスはどこから来るのだろうか。
 「広告代理店業の傍ら、28歳の時に岡山で初めて居酒屋を立ち上げてから、鍋のお店を開いたり、ワインバーをやったり、色々なジャンルの飲食業にチャレンジしました。だから飲食業に関してはかなり経験を積んだつもりでした。そうした経験の中から、ミャンマーではローカルの方々に比重を置いた店をやったらどうかなと、考えたのです」
 このコンセプトで心配されたが、邦人客も想像以上にやってきた。メニューの多さや安定感のある味、そして料金など総合的にコスパがいいと判断されたからであろう。
 まさにすべてがうまく回り始めたが、当初は試練もあった。1号店の場所も決まり、植木さん自身のラフデザインをもとに店舗工事もスタートし、予定では2013年11月に開店できるはずだった。しかし、それまで順調に来ていたミャンマー進出も、植木さん自身予期せぬ事態になって頭を抱える羽目になる。ミャンマー事業では初めて想定外の出来事が起きた。次号ではこのあたりの経緯をお話しする。

<略歴>
本名:植木 宏明 
Ueki Hiroaki
生年月日:1981年6月(35歳)
生まれ:岡山県岡山市
現在:独身
血液型:B型
職歴:大阪の大学を卒業後、運送会社の営業職に就職。その後NTTの営業職へ。2006年、25歳で独立起業。故郷の岡山市で広告代理店業を開始。また地元飲食店向けのタウン情報誌を発行。広告代理店経営を続けながら、28歳の時に岡山市内で居酒屋開業。以後現在までに居酒屋など市内に自身は3店舗、パートナー店併せて5 店舗の居酒屋を展開。
ミャンマー進出:2013年3月、ヤンゴンのサヤサン通りに、「蓮」1号店を開業以後、1年間で市内に「蓮」グループ4店舗を開業。2016年8月に7店舗目を開業予定。
将来の夢・目標:ミャンマー全域での店舗展開。難しいことを考えない40代になる。直感を磨き続ける。

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