◎今月の視点 「食の安全性」への意識向上こそ国際社会との信頼基盤に

どうやら、雨期のピークは越したような感じがする。8月は日本の猛暑をよそに、ヤンゴンは平均28度程度であった。

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雨期が終焉に近づいた気配 生活に直結した国内問題に目が

どうやら、雨期のピークは越したような感じがする。8月は日本の猛暑をよそに、ヤンゴンは平均28度程度であった。連日の雨さえ気にしなければ、気温的には快適そのものだった。11~2月くらいにかけては雨の心配も全くなく、朝晩は20度前後の気候で推移し、湿度も下がる。「早起きは三文の得」と言うが、ゴルファーのみならず、ヤンゴンの早朝の公園や湖畔での散策は本当に癒される気分になる。
 癒されたと言えば、先月はリオ五輪の日本のメダルラッシュに沸き、久々に胸のすく思いがした。しかしヤンゴンに居ると、その世紀のスポーツの祭典が開かれていることすら実感できない。ローカルのテレビも特別枠など設けるわけではなく、日本人選手の試合を抜粋中継などしない。だからネットで結果や映像を見て驚き、喜び、悲しむことになる。
 オリンピックでは米英、中国、ロシアらがメダル獲得でしのぎを削ったが、この地球上では五輪と同様の勢力争いが頻発し、文明、文化、宗教的価値観の相違からくる摩擦が生じている。この国にどっぷり浸かっていると、こうしたスポーツイベントのみならず、世界で起きている深刻かつ複雑怪奇な諸問題からどうしても隔絶されたような気分になる。日本にいたら、隣国たちとの軋轢や領土問題、果ては憲法9条論議や原発だとか、いやおうなしに国益を左右するグローバルな難題に直面し、選択を迫られるケースが多いが、ミャンマーではとりあえずは「渋滞や電力問題を何とかしてほしい」などと、外国人にとっても非常にローカルで生活に直結した切実な諸問題に一喜一憂せざるおえない。

安全性の意識を末端まで浸透させる 命にかかわる食への意識を厳しく

ミャンマーで暮らす我々外国人は、日々様々な国内問題に直面しているが、最近特に気になっているのが「食の安全性」である。先般、国内有数の某高級スーパーで豆腐を買ったが、自宅で開封したらぬめりのある黄色味がかった水がへばりついており、小片を試食すると案の定酸っぱい。むろんすぐ廃棄したが、この店では、以前大ぶりの玉ねぎの一つの中身が腐っていたこともあった。しかしいずれもクレームは付けなかった。日本なら現物を持参すれば平身低頭になるが、残念ながら、この国ではまだ事の重大さを理解していただくには時間がかかるだろうと踏んでいるからだ。
 くだんの高級スーパーと言われる店でも、冷凍食品ならまだ安心できるが、冷蔵棚に陳列された生鮮食品を購入するには勇気がいる。店は細心の注意を払っているかもしれぬが、末端のスタッフたちの意識が低いと、本当に怖い。マニュアルがなく、存在したとしても個人的な感覚や判断で食品賞味の処理を下されたらたまらない。魚貝類や足の早い食品で、七転八倒する破目にはなりたくはない。
 先月、日系のイオンが国内14店舗をもつオレンジスーパーと提携し、ミャンマー進出を決めたが、食の安全性に対するコンプライアンスを徹底できるのか、このニュースを聞いたとき、まずそこを一番危惧した。他国にある独自で仕切る大型モールならともかく、ローカルのスーパーとのジョイントには、トップはもちろん、末端に至るまで安全性への規範を浸透させていくことがまず重要だ。それができるのか。老婆心ながら、事が命にかかわる問題だけに厳しい姿勢で臨まないといけないだろう。

日本でもまだ起こる食品偽装 現政権も食の管理に動き出す

しかし、かくいう日本だって、ちょっと気を許すと食品にまつわる噴飯ものの事件が起きる。数年前の牛肉偽装や有名料亭の賞味切れ事件。また昨年から今年初めにかけては、カレーチェーン店の廃棄カツをスーパーに横流ししていた処分業者の姑息な行為も露呈した。こちらから見ていると、アジアの某大国ならいざ知らず、「日本でもまだそんなことを」と思ってしまう。それほど我々はあちらの食品衛生へ高い信頼感を持っていた。
 21世紀に入ってから世界は企業コンプライアンスをやかましく叫び始めたが、この言葉には「法令遵守」という意味のほかに、社会規範や企業モラルを守るという論理まで含むとの拡大解釈もなされている。
 欧米、日本では当たり前のようになっているこの論理だが、失礼ながら途上国では緩くなりがちだ。どうしても銭カネへの誘惑が先に立つからだ。しかしNLDの新政権はこの5月に、食品衛生管理に着手し始めた。まず賞味期限切れの食品への厳しいチェック体制を構築したというニュースが流れた。まだ完璧にはいかぬだろうが、この意識の流れはここに暮らす外国人のみならず、ミャンマーの人々にとっても歓迎すべきことだ。
 ヤンゴンの下町を歩いていると、実に香ばしい匂いが店の軒先から漂ってくる。当方を含めた外国人は、こうした屋台や露店で、何の疑いも持たずにおいしそうな焼き鳥をほお張りながら気軽に一杯やれる日が来るのを首を長くして待ちたい。

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