◎今月の視点 「世界一優しい民族」に輝いたミャンマーに真の民主主義の到来か

どうも気候が変だ。この国に住んで6年 になるが、11月中旬に雨が降ったのは初めてだ。

目次

6年ぶりの訪緬で目撃した美談 ミャンマー人のやさしさに感激

どうも気候が変だ。この国に住んで6年
になるが、11月中旬に雨が降ったのは初めてだ。異常気象なのか、乾季に入ってもスカッとした日が続かなかった。気温的には湿度も低めになり、爽やかこの上ないが。
 爽やかといえば、先般久しぶりにいい話
に出会えた。10年近く僧院などで日本語のボランティア活動を行い5月に日本へ帰国した渡辺正彦さんが、彼の友人のヤンゴンで遭遇した心温まる体験談を送ってくれた。
 予備校講師をしながらBRSA(在日難民
助け合いの会)及び南シャン州交流会会員
として長らくミャンマーへの社会貢献活動を行っている野上俊明氏が、11月に6年ぶりにヤンゴンを訪れたときの話だった。
 「~~略 2日目の夜7時ころでしたか、悪名高きレーダン交差点でニ、三十分ほどの信号待ちをしているときのことでした。暗がりからいきなり数人の女子学生風のお嬢さんたちが手に花輪を何本かずつ吊り下げて、渋滞している車列の横をこちらへ歩いてきます。ヤンゴンで貧しい子供たち、いわゆるストリート・チルドレンが、新聞やいい香りの花束やペットボトルを路上でドライバーたちに売りつけて露命をつなぐ光景は昔からごくありふれたものでした。が、この時はいかにも上品で、服装も整った娘たちなので、けげんな面持ちで眺めて
いました。~略」。そこで野上さんが連れの義弟に聞いたら、「子供たちに代わって女子学生たちが花売りをし、すぐ近くで別のグループの学生たちが子供に勉強を教えているのです」と説明してくれたそうだ。
 つまり家族のために勉強できない子供たちのために花売りの代行をし、その間に勉強の面倒を見るという、新しい形のボランティアだった。ミャンマーとの長い関わりを持つ野上さんでさえ、この情景にはジーンときたと述懐している。

2年連続で首位に輝く 先進国は軒並み下位

世界寄付指数(World Giving Index)という調査がある。英国の慈善団体「Charities AidFoundation」(CAF)と米国のギャラップが2010年から毎年行っている意識調査で、2016年の結果が発表された。
 「人助け」、「寄付」、「ボランティア」の各項目を合計100に指数化し、世界140か国、各1,000人を対象に調査したデータだが、今年はミャンマーが指数世界最高を記録し、最も思いやりのある他者を敬う国に輝いた。ちなみに昨年は米国と同指数で首位、14年は第3位だった。
 以前、この欄でも触れたが、このデータ
は非常に設得力のある情報だ。圧倒的な所得格差がある米国と凌ぎを削り、ついに首位になってしまった。ミャンマー人の“やさしさ”が数字としても表れ、具体的に証明されたからでもある。中でも寄付指数91%という数字は驚異的だ。寄付行為が日常的に広く一般的に行われているからご当人たちは至極当たり前の気持ちなのだろう。むろん50万ともいわれる僧侶を抱える上座部仏教の影響も抜きにはできない。お布施に対して、一番の功徳を積む方法だと教えられてきたからである。
 一方、残念なのはG20の国々がトップ20にたった5カ国しかランクされなかったこと。しかも11カ国は50位にも入れず、うち2カ国は100位圏外の日本と中国だ。この寄付指数だけ見れば、日本は他人に冷たい国だと思われる。しかし、もともと日本はシャイな方が多く、寄付行為を表に出して、いかにも“協力しました”という顔をするのが苦手だ。
 しかも“結”や“講”などといった古来からの伝統慣習でシェアや互助を行ってきた「村社会」である。だから「ひと様から強要されなくとも、困った人が目の前に居れば助けます」という意識が我々にはあり、見過ごせない現象には本心から心が動く。我々は決して冷酷な民族ではない。

沈黙していた民衆が意志を明確に 本当の民主主義が芽生えてきたか

冒頭で記した野上氏の体験談はミャンマー人のやさしさの一端を物語っている。
 しかしこうした形態のボランティア活動は極めて珍しく、野上氏も「信仰心からくる行動ならば、なぜ軍政時代にはこういう光景はみられなかったのか。やはりNLD政権の誕生と切り離せないと思いました。若い女性たちが今までならみなが眉をひそめたであろう、夜間の薄汚い道路での奉仕活動に自分の意思で参加しているのです。おそらく反対した親たちもいたことでしょうが、そういうハードルを乗り越えてきているのです。ささやかではあるが大きな変化を予感させる精神的状況の変化です。NLDの女性幹部の方が言うには、政権の移動以後、人々は少しずつはっきり言いたいことを言うようになってきたそうです」と結ぶ。
 確かにこの国の人々の中に、これまで内に包み隠していた感情を吐露する意識が出てきていることは事実だろう。“サイレントマジョリティー”だった民衆が、少しづつ自分の意思、意見を行動で表すようになってきた。これが民主化なのか。民主主義の芽生えなのか。ヤンゴン暮らしが長くなり、ややもすると日常の現象に目が留まらなくなることもあり、久しぶりに訪緬する方の感性はシャープで新鮮だと感じた。
 ともあれ現実の中では中々思い通りにいかぬことが多い国だが、今後は「世界一他人にやさしい国で仕事をさせていただいている」という認識を常に持っていたい。

Tags
Show More