◎第41回 旅│テリー先生の滞在記

「約4年間、ミャンマー国内を徘徊した 無茶な旅の思い出」

目次

    この連載も今回で最終回にしていただいた。「光陰矢の如し、石の上にも3年」という言葉が頭をよぎる。「テリー先生滞在記」を書き始めたきっかけは、有機溶剤エタノールを買いたくて街を歩いていると、ヤンゴンプレスの看板が見え、そうだ!誰か日本人に聞いてみようと思いドアーを開けたことから始まった。
     私の旅は、犬も歩けば棒にあたるを地でいき、思いついたらすぐに行動に移すことを原点にしている。「Serendipity」という英文の言葉がある。棒にあたるという意味に近い。ヤンゴンプレスの看板があの時の棒であった。以後3年半にわたり、多くのミャンマーの棒にあたってきた。
     第ー回目はヤンゴン環状線の旅であった。2013年11月のこと。当時は、乗車するにはパスポートを提示し、米ドル1ドル札を出す必要があった。私のキャラクターとなったイラストは、東海大学を退官する時に学生たちによる寄せ書きの真ん中に描かれていたものである。

    今考えると、思い出に残る旅はインド洋にある「ゴーヤンジ」へ行ったときの体験だ。友人のTさんとNgweSaung海岸から船をチャーターして行った場所である。車によるアクセスが不可能で、観光客の少ない海岸であった。それだけにその美しさに感動した。
    バスの長旅ではヤンゴンからガパリ海岸まで2日間、パスポートのコピーを数枚用意して3か所の検問所に提出して許可を得る旅であった。そこで戦時中に日本軍の森隊長から日本語を習ったというお爺さんに出会った。ガパリ海岸でレストランを経営していた。海岸には魚が豊富で、市場にはマンタの子供やカンパチ、カツオなどが並ぶ。

    今考えると無謀かとも思えた「一気通貫の旅」では、ヤンゴンからダウェイ、メイクそして南端のコータウンまでバスで行き、国境を越えてタイへ渡って温泉で有名なラノーンに立ち寄り、更に夜行バスでバンコクまで行った。タイへ入るまではバスがパンクしたり、エンジントラブルが起きたりし、挙句の果てにはオートバイと衝突する事故に出会う命がけの旅だったが、今は良き思い出のひとつだ。右前方からバスの前を横切ろうとオートバイが走り込んできた。オートバイがタイヤの下敷きになった。幸いにバイクの運転手は死ぬことはなかったようだが、蕎麦に転がっていたウイスキーの瓶が事故原因を物語っているようだった。

    それにもめげず現場からヒッチハイクをして、コータウンまで行った。いろいろな思い出が頭をよぎるが、メイクで高速船に乗り、白い砂浜のあるジャックフルーツ島へ行ったときは心が洗われる思いだった。イギリス人の後に海に飛び込んだ私は、湘南ボーイで泳ぎに自信があったが年を忘れていた。流れが激しい。ここで溺れたらみっともないと船に引き返したのだ。
    島を去るときに悲しい光景に出くわした。サイチョウ(Big horn bill)が足に縄をつけられている。喉元が青い色なのでメスである。小屋にいる男に聞いた、昨日オスを捕まえて食べたという。サイチョウはチン州の鳥で、州のシンボルになっている。チン州の友達に聞くと、自然に飛んでいる姿は見たことがないという。自然保護の大切さを訴える必要を感じた。

    チン州では大型の建設機械で道路拡張工事が続いている。道路を広げて何を運ぶのだとチン州の友人に聞いた。山の中には産業がないので木を切り出して運ぶための道路の拡張工事なのだろうか?
     チン州では、毎年サイクロンが襲い、土砂崩れになることが日常茶飯事だ。土砂崩れの対策として桜の木を植えることにしたという。桜が1月には満開になり実を結ぶ。苗を作る活動を始める。そして道路拡張工事の斜面に桜の苗木を植える活動をハッカ大学、地元の有志と協力して行うことにした。www.arakancherry.comが活動Webサイトである。

    この4年間、取材とはいえミャンマー国内各地を旅してまわった。どの旅も体力と気力の勝負だったが、幸いなことに現在元気に暮らしている。
     その旅を綴った「テリー先生滞在記」をご愛読頂き光栄に思います。体力の続く限りと思いましたが、もう小生も68歳。そろそろ無茶を止め、自分の専門の農業関係で何かお役に立てればと考えているが、果たしてできるかどうか。機会があれまたご報告いたします。長い間本当にありがとうございました。

    <テリー先生>
    本名 宮川照男。1949年平塚市生まれ。早大理工学部卒業後、山武ハネ
    ウエル(株)入社。1988から1992年、同社米国駐在所長を経て独立。
    野菜工場設備会社(有)アイエスエス設立。スプラウト栽培を日本に紹介、普及させる。その後、東海大学湘南キャンパス、チャレンジセンター特任職員として「ものつくり」「環境キャラバン隊」などを指導。2013年5月より、ヤンゴンにて農業視察、調査を開始。Yezin Agricultural 大学の学長らと、ミャンマー農業支援について討議を重ね、現在、同大学とヤンゴンのElephant Seed 会社と種子生産についての技術提携を計画中。小型飛行機操縦士免許取得。teruomiyagawa@gmail.com

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