◎今月の視点 「そんなに急いでどこへ行く。人の命は地球より重い」

先月中旬にミャンマーの気象局から「雨期入り宣言」が出された。

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救急車のサイレン音が茶飯事に 無関係ではない交通事故の増加

先月中旬にミャンマーの気象局から「雨期入り宣言」が出された。その前後に低気圧がきて暴風雨並みの大荒れの天気になった。それ以降はまだ本格的という状態ではなかったが、じわじわと雨期の気配は到来した。本番はいよいよ今月からである。
 しかし、雨が降れば多少は涼しくなるのでまだ許せるが、我々日本人にとってこの蒸し暑さだけはどうにも我慢がならない。外に出したエアコンのホースから滴り落ちる水量が増し、その速度も半端ではなくなった。その水を目当てに鳩やカラスが喉を潤しにやってくる。したたかで逞しい生物たちの生命力がうらやましくなる。
 ところで最近ヤンゴンでは、救急車のサイレン音が毎日のように聞こえてくる。各国からの寄贈が多いせいか、サイレン音も様々だ。UFOでも飛来したかのようなSFチックなものまである。
 かってニューヨークなどの大都会では、救急車のサイレン音が日常的に頻繁に鳴り響いていた。あちらでは犯罪がらみの出動が大半だったが、ヤンゴンではまだ交通事故関係が主流を占めるのではないかと推察する。
 車両台数が急激に増えたこの街では迂回道路が少ないため、どうしても幹線道路や最短距離で行ける道路に車が集中する。しかし急いだところで大勢に影響はないのに、割り込みや急な車線変更は茶飯事だ。
 左折レーンが渋滞してると、交差点間近で直線レーンから強引に割り込もうとする輩も絶えない。しかもそれを見た後続車が同じように真似して割り込み車の後ろに続き、直進車の進路をふさぐ。すると道路はたちまち渋滞になってしまう。
 狭いで道路でのU ターンや駐車での切り返し時にも、後続車が渋滞。これから新学期が始まる学校への送迎時にも、2重、3重駐車の送迎車で道路は混乱状態になる。
 初めてヤンゴンを訪れた方は、車両台数の多さばかりを見て交通地獄の現象を表面的にしかとらえないようだが、原因の一端はこうしたドライバーたちのマナーの悪さにもあるのではないか。

急激に増えてきた自転車族 目立つ無灯火、未整備の自転車

最近、もうひとつ目に付くことといえば、自転車の数がやたら増えたことである。バイクと違って市内での自転車走行は公認されているが、問題は安全への意識だ。無灯火の自転車が実に多い。ただでさえ夜間は暗く、街路灯も十分ではないのに、闇の中からいきなり現れる自転車族にハッとすることが何度もある。彼らは車がよけてくれると思って安心しきっているのだろうか。
 しかし交通量の多い暗い夜道で子供を後ろに乗せてふらふらとペダルを漕いでいる無灯火族をみると、他人事ながら心配を通り越して腹が立つ。なぜそんなに命を粗末にするのか。ヤンゴンは車優先社会で、歩行者、自転車は車に道を譲るばかげた慣習が根付いている。本紙の連載でもお馴染みだったテリー先生こと宮川照男氏も、自転車でダウンタウンに向かう途中でトラックにはねられ、ご自身はかすり傷程度で済んだが、自転車は大破した。一歩間違えば大惨事になっていたと述懐している。これも車優先社会の弊害ではなかろうか。当方もミャンマー免許を取得して5年になり車通勤をしているが、これまでこちらから事故を起こしたことはないが、強引な割り込みで側面をぶつけられたリ、信号で停車中に携帯に夢中になっていたボンボン風の若者におかまを掘られたことがあった。実際に運転していると、昼間はともかく、暗い夜間は常に飛び出しを予測しながら運転しないと本当に恐ろしい。 

全国で救急車が1000台余りという実態 規制、ルールは早急に必要だ

ヤンゴンで救急車の出動回数が増えたのは、こうした危険極まりない自転車族の出現やマナー違反のドライバーが少なくないことと決して無関係ではないだろう。
 先月、一般社団法人日本ミャンマー文化経済交流協会(会長宇野治)が消防車に続き、初めて救急車1台をエヤワディーの医療NPO 団体に寄贈したが、その贈呈式の席上、当該団体の関係者から「もっと救急車がほしい」と再三懇願された。ミャンマーの地方では応急手当ができなくて、助かる命も救えないケースが絶えないからだという。
 4月に消防車寄贈でお会いしたヤンゴン管区消防局長は、現在ミャンマー国内には1000台余りの救急車しかないと、驚くべき数字を述べた。それで今は各国に救急車の寄付を募っているところだという。
 ミャンマーの人口は約5100万人だから、1000台の救急車しかなければ約5万人に1台の割合となる。これは異常だ。例えば神奈川県逗子市(58,033人)や九州福岡の直方市(57,407人)に救急車が1台しかないと仮定したら、常識的に考えてこれは大問題である。
 むろん消防車もまだまだ十分とはいえないが、人命に直結する緊急自動車の増車は、年々外国人が増え、いつ何時テリー先生のような事故に遭うとも限らないからローカルだけの問題ではない。
 交通手段がバス、タクシー、トラック輸送などの車か環状線に限られるヤンゴンでは、自転車の利便性に気づき始めた理由も分かる。これからも増々自転車族が増えてくるだろう。しかしそれならなぜ夜間の無灯火走行に規制を設けないのだろうか。ランプを装備するには費用が出せないという理由なら、街で売っている3000KsくらいのLEDランプをぶら下げたり、蛍光塗料付きの簡単なベストでも羽織るようにすれば、少なくともドライバーは事前に認識できる。事故になる確率は多少は下がるのではないかと思う。 
 水かけ祭り明けから、例年のように停電が頻発した。国はこうした電力インフラの改善を最優先課題として努力しているようだが、極論すれば停電になってたところで緊急治療中の医療施設でもない限り、人間が死ぬことはまずない。
 しかし テ-ルランプが破損している未整備の車や無灯火の自転車等は、間違いなく死亡事故に直結する。だから本来ならこうした危険な状態に対して、何らかの対策、規制を早急に講じていかなければならないのではないか。
 どこの国家でも国民の生命財産を守ることは当然のことだが、こうした危険な状態を野放しにしていることは国民の生命を守るという観点からすればいかがなものか。事故を起こせば加害者も被害者も悲惨で、国家にとっては大きな損失である。
あえて比較はしたくはないが、一時期日本でも自転車族の事故が増えたことから、専用レーンの設置や自転車走行に対しても道交法の適用を決め、厳しいルールを設けた。人の生死に関わる問題だと社会全体が自戒したからである。
この国だってこうした規制を設けることに対して国民から反発が出ることはないと信ずる。欧米、日本とは違い、ミャンマーはまだまだのんびりとマイペースで生活し、我々外国人にとってはスローライフを実践できるある面では希少国なのだ。命を粗末に考えるべきではない。また、そうした風潮を根付かせては絶対にいけない。

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