◎今月の視点 今、問われるリーダーたるものの“器”と“資質”

どうやら本格的な雨期に入った。午前中の晴れ間など当てにならず、午後は傘が手放せない。

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年々緊迫化する国際情勢 対岸の火事ではいられない

どうやら本格的な雨期に入った。午前中の晴れ間など当てにならず、午後は傘が手放せない。雨雲が広がるとスコールの来るスピードの速いこと。それでもいくぶん涼しくなるからまだ救われる。
 ところでこのところ、日本を取り巻く東アジアや欧米、中東など、国際社会の動向がやけに騒がしい。各国が国益、既得権益、信条を固守しようとするがために起きている対立、いざこざだろうが、ミャンマーのようなのんびりとした国にどっぷり浸かっていると、どうも緊迫感が伝わってこない。ヤンゴン暮らしが長くなれば、とかくカヤの外に置かれがちだ。さりとて最近の世界の動勢は、さすがに対岸の火事を見るような無関心な態度ではいられなくなった。
 なかでも米国のリーダーが地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」から離脱すると述べたことは驚きだった。失望を通り越して腹だたしくもあった。規約上ではそう簡単に離脱できないそうで、このアナウンスはどうせ彼一流の駆け引きだろう。しかし膨大な温暖化ガスを排出する当事国が、地球と人類の未来よりも、ピッツバーグの支持者である石炭産業界との約束を優先する思考がどうにも理解不能だ。
 日本の隣国の新大統領にしても然りである。国家間で正式締結した条約など遵守するどころか、国民の顔色ばかりうかがっている。あわよくば破棄して再交渉に持ち込む意図が見え隠れし、もう何をかいわんやである。
 EUを離脱し自国権益に走った英国も、何を血迷ったか十分な任期を残しながら総選挙に持ち込んだ保守党のメイ政権が惨敗し、反省したのかすぐさまEU との完全離反に含みを持たす政策を発表した。
 日本だって国防、外交、憲法などの重要問題が山積しているのに、野党は学校建設認可で首相サイドに忖度やごり押しがあったかどうかや、低俗な女性議員の暴言問題などの追求に血眼になっている。こうした問題を軽視しろというわけではないが、支持率6%台以下の野党の方々は、朝鮮半島の有事のことなど念頭にあるのだろうか。当方はどうしても日本国民の国益や防衛よりも、ご自分たちの少数の支持勢力に目線が向いているようにしか思えない。
 もっと失望落胆したのは東京都の女性リーダーである。知事就任早々に豊洲移転に待ったをかけたまでは期待が持てたが、その後の優柔不断な態度がいただけない。その挙句、豊洲に移転して、5年後に築地の再開発などと予算の確固たる裏付けもないくせに夢物語に近いことを吐露した。それも都議会議員選挙直前の土壇場で、どう見てもハ方美人的な手法で有権者を取り込もうとしている魂胆が見え見えだ。こうした国内外のリーダーたちは、どうしてこうも大多数の国民や有権者をないがしろにして、ご自分たちの支持者のご機嫌ばかりをうかがおうとしているのか。どの方も就任早々のはつらつとした顔から、だんだん悪相になってきているように見えるのは、当方だけの思い過ごしだろうか。

地球と人類の未来を危惧する法王 慈愛に満ちた世界感と思想

今から22年前に、当時関わっていた思想系の月刊誌の特集で、インド北部のダラムサラにあるチベット亡命政府(正式名:チベット中央政府、ガンデンポタン)で、ダライ・ラマ14世法王猊下(げいか)にインタビューしたことがある。
 むろん承諾いただけるまで、可能な限りのルート通じてオファーをお出しして半年かかったが、「ダラムサラに来て数日待機してほしい」、「政治的な話には触れない」という2つの条件を守ることで、猊下への取材は実現した。
取材謝礼などという世俗的な要求も一切なく、仕方なく我々はお布施という形をとらせていただいた。そして今だから明かせるが、猊下が趣味でカメラを収集しているとの極秘情報を入手したので、当時の日本製N社の最高級カメラを、失礼に当たるかどうか不安を抱えながらもお土産にさせていただいた。しかしその危惧は徒労に終わった。カメラをお手にした時の猊下のくったくのない笑顔は今でも脳裏に焼きついている。
 ご承知のように法王猊下はご自分の意思や野望で最高指導者になったわけではない。1935年生まれで今年82歳になられる法王(法名:テンジン・ギャッオ)は、崩御された前法王「13世」の化身として4歳の時に「14世」に認定され、翌年即位された。
 24歳の時にチベット動乱で政治難民となり、インドの庇護下で亡命政府の国家元首に就任した。世にはあまり知られていないが、この中央政府には憲法に相当する「亡命チベット人憲章」があり、3権分立を旨とした民主議会と内閣もある。つまり法王猊下はあくまで国家元首であり、精神的支柱なのである。
 実際にお会いしてじかにお話しをうかがった時、当然だが過酷で悲惨な状況に置かれているチベット人民の救済をお言葉にした。しかし猊下の説話の端々には、常に地球の未来永劫の繁栄と人類の幸福という慈愛に満ちた大きな思想を感じ取ることができた。そして最高指導者ながら世界各地へ出向き、チベット人民を含む人類の平和共存と幸福を説いてきた。例えは稚拙だが、トップ自らが今でも精力的に広宣啓蒙活動を行っているのだ。
 その猊下の思想の根幹をなすのが「非暴力主義」(アヒンサー)であり、これは敬愛するインド独立運動の父故マハトマ・ガンジー氏の影響を受けていると、猊下自身、はっきりとおっしゃった。
 ガンジー翁は、インドの古代叙事詩「バガバッド・ギーター」から無私的行動の重要性を学び、また西洋の平等かつ民主主義の思想と不正に対する大衆の組織的闘争の考え方にも感化されたと自叙伝で述懐している。「正義と真理のために苦難を甘受するという範例を自ら示すことによって敵対者の回心を促そう」と考えたという。このガンジー翁を師と仰ぐと明言した法王猊下は、アジア全体を非暴力地域にしたいと、最後に締めくくった。

地球規模の環境保護との認識 昨年ミャンマーも早々と参加

米国大統領が無責任な離脱発言をした気候変動対策「COP21、パリ協定」に関して言えば、現在、196の国・地域が参加しているまさに地球規模の環境保護協定である。しかしこの協定の採択に向けては途上国の資金支援が最大の焦点となった。
 「温暖化は先進国の責任」とする途上国と、将来の支援額を明示できないうえに、新興国も拠出側に回ることを希望した先進国との間で激しく意見が対立。最終的には途上国への資金支援を義務づける一方、具体的な拠出額は協定とは切り離す形で2025年までに、最低でも年間1000億ドルとする新たな拠出額の目標を決めることでようやく決着した。
 日本はCOP21の首脳会議で、安倍総理が途上国支援とイノベーションの二本柱からなる貢献策を発表した。日本による途上国向け気候資金として、2020年までに官民合わせて約1兆3000億円(現状の1.3倍)に増額する旨を表明。また、「エネルギー・環境イノベーション戦略」を策定し、この分野における先駆者として貢献する決意を表明している。
 ミャンマーの現政権もことの重要さを十分に理解しているうようで、昨年、ニューヨークの国連本部で行われた署名式で、ミン・オン・ウィン天然資源・環境保護相が、協定に調印した。
ダライラマ14世法王猊下からインタビューでお聞きした説話の中で、特に印象に残っているお言葉があった。
「(人間、国家、組織など)大きくなるにつれて、愛情、友情、助け合いということに、あまり重点を置かなる。人種、宗教、国籍といったことが、大切になってくるのです。そして、もっとも大切なことを忘れ、どうでもいいようなことに重点を置くようになる」  この考え方こそまさにリーダーたるものの姿勢であり器であろう。冒頭で触れた世界の自称リーダーたちに、ぜひ耳の穴をほじくってお聞かせしたい言葉だった。

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