◎ミャンマー人の肖像

ミャンマー飲食ビジネス業界に君臨するカリスマ経営者 音楽を愛し、スタッフからも敬愛を受けるCEO の素顔

U Soe Nyi Nyi ソー・二・二さん Feel Group CEO

日本人でも大半の方が一度は足を運んだことのあるミャンマーを代表するローカルレストランが「Feel」である。地元の方にとっては高級料理店として名高いが、今や全国に22店舗を構え、2000人の従業員を要するこの国最大の飲食グループを率いるのは、一代でFeel 王国を築き上げた伝説的な経営者のソー・二・二氏だ。今回忙殺される中でお話しを伺う機会を頂いた。

「Feel」の名前は知っていても、一体誰が経営者なのか、これまで日本人ならずともミャンマー人でも精通する人は少なかった。シャイな方で、滅多にメディアには出ない。ご自身も、有名人になろう気持ちはサラサラなく、初めての印象は実に自然体の方だと感じた。  ソーさんはシャン州のリゾート地ピンウールインで生まれた。18歳でヤンゴンに上京。ヤンゴン大学を卒業して、ミャンマーでどのようなビジネスを興そうか意気揚々と燃えていた。しかし当時は何をどうしたいという具体的な目的はなかった。時代も厳しかった。だから最初は色々な仕事に就いた。タクシーの運転手から魚のペットの宅配までやったという。苦労を肥やしにした時代だったのだ。  1992年、34歳のときに、ついに決断をした。仕事で蓄えた資金を元に「Dream Burger and Snacks」という小さなハンバーガーショップを現在の「Feel」本店のあるアローン地区からほど遠くない場所にオープンさせた。念願の自分の店だった。  「私の家族は美食家揃いで、いつも美味しいものを探していました。それなら自分で新しいコンセプトの店を作ってやろうと思ったのがきっかけでした」と、ソーさんはその動機をこともなげに言うが、ローカルフードならいざ知らず、ハンバーガーのような外食となるとやはり素材や調理方法などで苦労したという。それでも6,7年続けていると店は軌道に乗り始めた。しかしソーさんの最終目標はやはりローカルレストランを経営することだった。  「そこで中華料理を主体にした料理を出したり、新メニューを考案したり、試行錯誤を重ねながら、2003年に現在の形となるミャンマー料理店『Feel Myanmar Food』をオープンさせたのです。最初はこの国で昔から日常的に食べられている料理、揚げ物、デザートなどを揃えたミャンマー料理の専門店にしました」。 すでにご存じのように「Feel」では20~30種類以上のミャンマーカレー、サラダ、炒め物、麺などを、店の奥のバットに並べられた料理の中から指指して選ぶスタイルだが、1品1500~2000Ks の手ごろな価格も相まって、店はたちまち中流階級以上のミャンマー人が押し掛けてきた。  以来、Feelグループは驚異的な成長を遂げ、この14年間で全国に22のレストランを開設し、2000人以上のスタッフを抱えるまでになった。ちなみに「Miami Grill」, 「MIX Restaurant & Bar」や日本、メキシコ、ミャンマーと西洋料理を提供する「Taste」、タイ、韓国、グリル料理が楽しめる「Enjoy Garden」など幅い飲食の系列店を持ち、さらに今では建設業やコーヒーマシンなどの販売まで事業を拡大している。  「Feelに関しては今年はあと3,4店舗の新店を予定している。シャン州のカローには5階建てビルを買い取り、1棟丸ごとFeelグループの飲食店にするんだよ」。  凄い勢いだが、ミャンマーの飲食店経営で成功するための何か秘訣でもあるのかと伺ったら「それは日本式なんだよ」という意外な答えが返ってきた。   なんでもFeelの1号店をオープンするときに、日本で10年間飲食店で修業して帰国した友人のミャンマー人のアドバイスと意見を大いに参考にしたという。  「日本人のビジネスに対する姿勢は素晴らし。世界一だ。絶対に手を抜くことはしない。清潔感、味、素材の選び方、スタッフのサービスなど、どれもお手本にさせてもらったよ」。  確かに沢山の油を使うミャンマー料理だが、Feel では油を使い回わししたりはしない。系列店で出しているパンやケーキあるいはイタリアン・ジェラードにしても、100%無添加の自然の味を売り物にしているという。  「私たちはミャンマーで最も責任あるビジネス・チェーンの一つであることに誇りを持っている。、だから常にサービスはもちろん健康で衛生的な料理を提供しています。毎日、品質と安全性をチェックし、100%の満足度を達成するためにスタッフを効率的に訓練しているんですよ。発想の原点はすべて日本の品質管理と誠実な姿勢に尽きるね」。  ヤンゴンには和食店の進出が目覚ましいが、彼らにアドバスをするとしたらどのような点かと尋ねたら、それは3つあるといった。 「ミャンマー人にも好かれる店にすることがまず第一です。そのためにはローカルの味の嗜好を研究しないといけない。ミャンマー人は生の魚は苦手だ。味付けも濃い方がいい。それとこれがいちばん大事だが料金です。日本食は高すぎるというイメージがある。これでは若いミャンマー人は行けない。値段を抑えて、濃い味付けの肉や野菜系のメニューを工夫すれば、流行りますよ」。  現在、Feel の新店をオープンさせるには約1億円かかるそうだ。郊外でも広い駐車場スペースが必要だから土地代が大半を占める。だからこの国最大の飲食グループでも、そう簡単には資金手当てがつかない。そこでフランチャイジー方式も視野に入っているという。  「日本の投資家にFeel のフランチャイズのオーナーになっていただく。これはいいアイデアだと思っています。もっと大きなプロジェクトについていえば、日本人と共同で新しいフードビジネスを立ち上げたい。アイデアはありますが、日本の方の意見を参考にしながらこれまでのミャンマーにない飲食店のチェーンをやってみたいと思っているんですよ。興味がある方は遠慮なく申し出てください」

58歳にして増々事業欲旺盛だが、日本人とのフードビジネス立ち上げは本気だ。取材の翌日、本店で巻物を中心とした新メニューをお披露目するので来てほしいと誘いを頂いた。試食してみると味は悪くない。巻物ならミャンマー人も食べる。まだ試作段階だが、正式にFeelの新メニューに加わるかもしれない。  Feel 本店の右隣にあるFeel Gardenでは、毎晩ライブ演奏が行われている。某日、覗いて見たらステージ中央でマイクを握って熱唱していたのはソーさんだった。  「実は持病の糖尿病の予防でね、この病気はストレスがよくない。だから気持ちを切り替えて毎晩ここで歌っているんだよ」。と謙遜していたが、渋く声量のある歌唱力はなかなかのもの。ラブソングやバラード系の歌が好きだというソーさんのバックバンドをつ務める方々は皆プロだという。市内の飲食店などでライブで演奏していたミュージッシャンを、彼が面倒を見ているそうだ。一生懸命に打ち込む人間には車もポンとプレゼントしたりするという。親分肌で、Feelグループの全従業員から尊敬の念で慕われているのも理解できる。  「スタッフは皆私の子供なんだよ。家族なんだ。大事にしてあげないといけない。若い子供たちが成長して、一人前になって自立していくのが楽しみだね。できることなら給料だって沢山あげたいんだよ」。  未だ独身を貫抜き通すソーさんの歌声を聴きたければ、Feel Garden のライブに出かけてみるとよい。久々に先見性と大局観を持ったミャンマーの実業家に出会えた。

<Soe Nyi Nyi 略歴> 生年月日 1958年12月23日 58歳 生まれ  シャン州 ピンウールイン 学歴  ヤンゴン大学  信条  従業員を家族のように、自分の子 供たちのように育て一人前にすること。

Tags
Show More