緊急特集 日本政府が港湾整備、深海港建設など「ダウエーSEZ」のテコ入れに 緬泰間の高速道路建設も決まり、将来への飛躍が期待されるタニンダリー管区

長らく動きが鈍かった日本政府がミャンマーの3大経済特区のひとつ「ダウエーSEZ」への開発支援を見直し、港湾整備を中心に舵をきった。

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長らく動きが鈍かった日本政府がミャンマーの3大経済特区のひとつ「ダウエーSEZ」への開発支援を見直し、港湾整備を中心に舵をきった。間近になった「南部経済回廊」完成への布石とも思えるが、このルートはメコン地域を巻き込む壮大な経済圏の動脈となる。そこで今回ダウエーの最新情報を中心に現況をお伝えしよう。

紆余曲折を経て光明が射してきたダウエーSEZ

緬、泰、日の3国共同で行う「ダウェー特別経済特区開発プロジェクト」は、バンコクの西約 300㎞に位置し、古く からマラッカ海峡を経由せずにインドシナ半島からアンダマン海に出る玄関口として認識されており、地政学上重要な地として注目されてきた。
 つまり、中国主導で「一帯一路」政策の一環として位置づけられ、すでにパイプラインも敷設されている西部ラカイン州の「チャオピュー経済特区」や、日本主導のヤンゴンにある「ティラワ経済特区」と決定的に異なるのは、「ダウエーSEZ」が、タイをはじめとしたメコン諸国からも大きな期待感を持って注視されている東南アジア最大規模のSEZだからである。
 そのため、このエリアの将来性に着目したタイ最大手のゼネコンであるイタリアン・タイ・デベロップメント社(イタルタイ)は、今から23年も前の1996 年に、当時のミャンマー軍事政権と協議を行い、ダウェー市街から北へ 30km 行った海岸部に、 深海港を中心とした輸出型経済特区開発を行うことで合意した。
 しかし、翌年1997年のアジア通貨危機により、この事業計画は中断。その後約10年後の 2008年に、緬泰両政府がプロジェクト再開の覚書を交わし、同じ年にミャンマー政府港湾局とイタルタイ社が覚書を締結。さらに2010 年になると、これら当事者にタイ運輸省が加わり、計画通りに約 200 ㎢にも及ぶ広大な敷地に輸出型経済特区をつくること、また同経済特区とタイ国境を結ぶ道路と鉄道の建設を条件に、イタルタイ社に開発権を付与する旨の契約 が結ばれた。
 しかしながらこのSEZプロジェクトは規模が大きく、東南アジア一国がその権益を享受するものではないという重要性から、民生移管が始まり、テン・セイン政権になった2012年に緬泰両政府が積極的に支援に入る旨の覚書が締結された。
 そして翌2013年には両国政府間でプロジクト遂行のための特別目的会社が設立され、事業を政府主導で行うことを決め、その特別目的会社がイタルタイ社から正 式に開発権を継承した。
 2014年に入ると、両政府はプロジェクトの初期フェーズとして、軽工業用の地区 27 ㎢の開発着手を決定し、公開入札を実施した。これに再びイタルタイ社のみが応札したため、同社が開発会社に指名された。しかしイタルタイ社は、契約プロジェクト実施のためのファイ ナンス調達が期日までにできず、 昨年になっても 指名権は発効していない。
ミャンマー政府側も契約発効に必要な敷地のリース契約に署名しておらず、プロジェクトは半ば宙に浮いた状況となったが、本来なら契約条件不履行としてイタルタイ社の開発権は中断されるが、そうしたところで同社に代わる業者もいないため、ダウェーSEZと緬泰国境のティキーを結ぶ高速道路の建設工事に、タイ政府が45億バーツの借款を実施した。
 一方日本政府は2015年に、長年に及ぶ緬泰両国からのプロジェクト参加要請に応じ、翌16年にはこの特別目的会社に出資した。
 そして今年7月に経済産業省がダウエーSEZの開発方針を見直すとことを明らかにし、インド向けの輸出に念頭をおいた港湾と物流施設の開発を優先することで、ダウエー深海港の建設をも視野に入れた、積極的な支援体制に入ることを発表した。

「南部経済回廊」が完成間近になってきた

こうした状況の中で、ダウェーSEZと麵泰国境のティキーを結ぶ高速道路の建設工事が来年10月から開始されることが決まった。この高速道路は上下4車線で全長は165km。基礎から建設工事までタイ政府の45億バーツの借款が充てられ、来月末をめどに建設についての最終案が確定する予定だ。
 1959年以来、自由な貿易と旅行の対象として語られ続けてきた「アジアハイウェイ路線」の一環として、アジア開発銀行主導の下に「大メコン圏経済協力プログラム」が決議され、交通、 通信、 エネルギー、人的資源、環境、貿易、投資、観光、農業の9部門にわたるメ コン河流域のインフラ整備計画が合意された。その地域とはカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイ、中国雲南省の5カ国・1 省から なるエリアで、1992 年、そのうちの交通インフラとしての「東西経済回廊」「南北経済回廊」「南部経済回廊」(通称「第 2 東西回廊」)のプロジェクト が実行に移された。
 中でも「南部経済回廊」は、ベトナム南部のブンタオ(深海港)からホーチミン、カンボジアの首都プノンペン、タイの首都バンコクを経由してミャンマーのダウェーまで結ばれるが、3 つの経済回廊のうち、各国の大都市を通過するのはこの回廊のみで、物流ルートとしての価値と役割の大きさは計り知れない。
ちなみに今回の高速道路が完成し、回廊がつながった場合、マラッカ海峡を経ずに アンダマン海に出られることで、物流上 3 日間のセーブが可能となるという。これによってインドシナ半島の経済力を大きく底上げするのみならず、同地域に数多く進出している日系企業にとっての経済的な効果、さらには日本の同地域における将来に向けた地政学上のプレゼンスにとっても極めて重要な役割を果たすこととなるだろう。 そうした要素と将来性を加味し、日本が物流施設の開発、深海港の建設に意思表示をしたのは納得がいく。
 参考ながら、タニンダリー管区首相補佐官でグリーンフィールド経済政治研究所所長の岩澤康晴氏が昨年、ベトナムのブンタウ、ホーチミン、カンボジアのプノンペン、ポイペト、タイのバンコク迄繋がる「南部経済回廊」を実際にバスまたは車で踏破した。
 実際にバスか車に乗っていた時間を合計するとダウェー-ティキ6時間、プーナムロン村-バンコク4時間半、バンコク-アランヤプラテート5時間、アランヤプラテート宿から国境(ポイペト)約30分、ポイペト-プノンペン10時間半、プノンペン-ホーチミン6時間を合わせ、32時間であった。
 現実にはこれに入出国の審査時間が加わるのでもう少し掛かっている。トレーラ等の輸送であれば、このバスよりもっと早く移動できそうであるが、税関手続きその他が非常に時間を取っているようで、今検討されている各国境間での越境交通協定(CBTA)次第で全体の輸送に必要な時間は大きく変わると推察した。早期の越境交通協定締結が望まれる。
 つまり現在、ダウェーからホーチミンまで入出国審査時間を考えなければ乗車時間で32時間かかる。このうち、6時間がダウェーからタイ-ミャンマー国境のティキ迄の所要時間になり、舗装整備によりかなりの短縮が見込める。また、残りのタイ-ミャンマー国境プーナムロンからホーチミン迄は急勾配も無く舗装はほぼ完成していて、一部では片側2車線化の工事をしているような状況であった。こうしてみると、やはりダウェーSEZ-ティーキ間の早期の舗装整備の重要性を再確認することができた。

将来大化けする可能性を秘めたエリア

筆者も昨年来、ダウエーに支局を設けたため、この州都を中心にタニンダリー管区には何度も足を運んでいる。今年3月にはバンコクから陸路でダウエーまで走ってみた。タイとの国境の町ティーキから途中のミッタ間約57㌔がまだ未舗装で、ここを抜けるのに4時間近くかかったが、高速道路が完成すれば、1時間半くらいで通過でき、バンコクから国境検査を入れても6時間以内でダウエーまで行けるようになるのは確実だ。
 国境の町ティーキには、すでにカジノつきホテルが2軒オープンしており、タイ人観光客でにぎわっていた。ここには、あと10件のホテル建設が予定されているという。
 先月の日本政府による公式の開発への参画表明以来、岩澤補佐官や弊紙ヤンゴンプレスには、投資を含めた問い合わせ案件が増えてきた。もちろん州都といえども、ダウエーには外国人用のサービスアパートなど皆無で、ビジネス目的で来た外国人はホテルの長期滞在を余儀なくされている。
 そのホテルにしても外国人が快適に泊まれる宿泊施設は少ない。飲食店然りである。だからこうした分野での投資は期待感が持てるといってもいい。ヤンゴンに比べれば、まだまだ土地は安い。
 日本にいると、そしてまだこの国に来たことのない方は、ミャンマーイコールヤンゴンと思いがちだ。ヤンゴン在住邦人の方でも、タニンダリーに関する情報が少ないので、詳細を把握できないでいるケースが多いと聞く。
 弊紙は何度もかの地に足を運んでいるうちに、ミャンマーで将来大化けする可能性があるのはこのエリアを置いてほかに無いかも知れぬと確信した。
 幸い弊紙は管区政府から政府広告をいただいている。取材に関してもさまざまな便宜を図っていただいている。それだけにこの管区の発展と繁栄のためにご協力できたらと考えている。これからも正確でピュアーな情報をお届けしていきたい。
 最後になるが、首相がティキ国境区でホテル事業を許可したと、DICAが発表した。これによりホテル事業が再開される。この事業は2016年にMICから許可を得ていた。しかし管区首相はホテル事業区域が余りにも国境線に近いため、ティキ国境区でのホテル事業を止めていた。この事業はティキ村の土地50エーカーで運営される。タイのポンピパット社がこの国際ホテル建設事業に投資することになっている。

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