第19回 ミャンマー人の肖像 U Myint Maung ミン・マウン Thanintharyi Region Chief Minister タニンダリー管区首相

ヤンゴンエリアに暮らしていると、政治、経済ならネピドーやマンダレーが中心となり、観光ならバガンやインレーあたりが話題に上る。しかし最近はミャンマー南東部に細長く伸びるタニンダリー管区への注目が以前より増している。

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天然資源・環境大臣から新首相に抜擢 誠実な人柄、堅実な手腕に期待が集まる

 ヤンゴンエリアに暮らしていると、政治、経済ならネピドーやマンダレーが中心となり、観光ならバガンやインレーあたりが話題に上る。しかし最近はミャンマー南東部に細長く伸びるタニンダリー管区への注目が以前より増している。
 管区都のダウエーへはヤンゴンから600㌔だが、バンコクから約350㌔と近く、ミャンマーよりもタイ側の経済界がこのエリアへ大きな期待感を寄せ、現実にイタリアン・タイ社がダウエーSEZの開発工事や、国境のカンチャナプリからダウエーまでの未舗道路の修復工事まで行っており、道路完成後はベトナムのホーチミンからカンボジアのプノンペン、そしてバンコクを経由してダウエーまでいたる「南部経済回廊」が完結する。
 こう考えるとダウエーを中心としたタニンダリー管区は、ミャンマーというよりも将来的にはメコン経済圏に組するきわめて重要な位置にあることがわかる。ましてやダウエーSEZは、現在ヤンゴンで進行中のティラワSEZの約10倍、東南アジア最大規模の経済特区になる。ダウエー港にしても、インド、中東へのハブ港としての役割が期待され、マラッカ海峡を通らずに陸路で輸送が可能になるため、近い将来はバンコク港に匹敵する規模になると予測されている。
 今回お話をうかがったU Myint Maung管区首相は、4月に汚職で失脚した前首相に代わり、天然資源・環境大臣から新首相に抜擢された方で、タニンダリー管区のNLD政党の書記長を3年間も務めている。
 そこでまず首相に就任した感想をお聞きした。「私は、清潔で透明性のある政治を心掛ける。そして説明責任を果たす政府を構築します。」と力強く言った。
 さほど雄弁ではなさそうだが、しっかりと前を見据え、ご自分の意見やポリーシーをはっきると述べるその姿勢にまず好感を持った。
今後の課題や懸案事項について問いかけると「この地域の慢性的な電力不足をまず解決していきたい。そして現在問題となっている土地紛争にも取り組んでいきたい」と、首相からはこんな答えが帰ってきた。電力問題は前首相が電力にからむ贈収賄で住民の怒りを買っただけに、まず優先課題になるそうだ。
 「電力の大半が民間業者によって供給されているタニンダリー管区では、公正な電力料金を確保することが重要でしょう」と、言い切った。
 土地問題とは、これまで民間企業が所有していた遊休地や使われずにいた農地を、地域全体の発展のために地元の農民に返すというものだった。「この地域の観光産業と漁業の発展、地域の安全保障と法の支配の推進、そして天然資源の責任ある抽出の確保についても話し合いました。その中で土地の有効利用は最優先課題ではないかという結論に達したのです。」
 タニンダリー管区議会には選挙で当選した21人のNLD議員がおり、後の7人は軍が任命した議員構成になっている。UMyint Maung首相は、2015年の選挙で南部のコータウン郡区から選出された。そして天然資源・環境大臣に任命され、手堅い行政手腕は中央政府からも評価されていたという。
 すでにご存知のように管区都ダウェーで進行中の経済特区(SEZ)は、これまでその開発ペースは遅々として進まなかった。しかしローカル 紙「7Day Daily」によると、「ミャンマー中央政府のタン・ミィン経済・貿易相が、ダ ウェーSEZの開発工事を今年10月の雨季明けを目途に本格化すると発表した」と報道。今後、ダウェー SEZの開発が一気に加速する ことにもなりそうだ。
 この点について首相は「第1フェーズとして計画されていたタイ・カンチャナブリからダウェーへのアクセス道路、深海港、工業団地の建設を並行実施していく予定で、これにより停滞して いたSEZ開発が加速していくでしょう。
 アクセス道路建設のため、タイ政府から低利で約46億バーツの融資を受けることがすでにわが国の国会でも承認されています。タイ周辺国経済開発協力機構(NEDA)からの拠 出も決まっています。」
道路の整地作業はタイ大手ゼネコン、イタリアン・タイ・ディベロプメント(ITD)がすでに開始しているため、雨季明けを待ち本格的な工事が始まる見通しだという。これまでの発表によれば、アクセス道路は2020年初頭に完成する予定。
 一方、工業団地と深海港の開発は、管区政府高官がヤンゴンプレスに語ったところによれば、 SEZの工業団地開発総面積197平方㌔のうち、第 1 フェーズ 27平方㌔の工業 団地開発はITDが担当しているが、残りのエリアの開発はミャンマー・タイ・日本の3カ国共同で行われる見通しだと いう。
 「ダウェー開発への日本政府・日本企業の参加は大いに歓迎します。SEZ開発のためのマスタープランもJICAが現在作成中です。管区各省庁も確認作業に入っており、最終的な提出は今年8月末になるでしょう。」と、新首相も日本の協力を強く望んでいた。
 しかし、新首相主任後にいち早く表敬訪問したのは、意外にも在ミャンマーアメリカ大使館のScot Marciel大使だった。米国もこのエリアに並々ならぬ関心を寄せていることがうかがえた。
 新首相の大役を任せられ、山積みする問題を処理せねばならない忙しい最中に、U Myint Maung氏は、弊紙のために貴重な時間を割いていただいた。お話をうかがってみると、地味だが堅実に政策を実行していってくれそうな誠実な方だという印象を強くした。
 5月1日付けで、引き続き管区首相補佐官に正式に任命された岩澤康晴氏のご尽力に謝意を述べたい。

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