今月の視点、白人世界の傲慢な価値観に屈することなくアジア人の誇りをもって国造りを

年明け早々、ヤンゴンの朝晩は異常な寒さになった。8日には瞬時だが小雨がパラついた。ミャンマー滞在7年、いずれも経験したことのない現象だった。しかも同日、隣国のバングラデシュでは2,6度で死者も出たという。

欧米で人種差別行為が多発 根底にある「白人至上主義」

 年明け早々、ヤンゴンの朝晩は異常な寒さになった。8日には瞬時だが小雨がパラついた。ミャンマー滞在7年、いずれも経験したことのない現象だった。しかも同日、隣国のバングラデシュでは2,6度で死者も出たという。反対にオーストラリア西部では47,3度という狂暑になり、米国ニューハンプシャー州では氷点下38 度を記録した。数字で見れば米豪の温度差は実に85,3度だった。  一体地球はどうなってしまったのか。温暖化ガスで北極の氷が溶けだし、気候のメカニズムが狂ってきたというのが原因らしいが、この異常気象には少々戦慄さえ覚える。  異常といえば、新春から欧米では耳を疑うような出来事が頻発した。米国の大統領がハイチやアフリカの国々を「屋外便所のようだ」と、英語では口にできないような暴言を吐いた。間髪を入れずに国連に加盟するアフリカの54カ国の大使は、「驚き、あきれ、常軌を逸した人種差別主義者の発言に強く抗議する」として、発言の撤回と謝罪を要求した。また、「このような考えが米国政府から広まり、アフリカ大陸や有色人種を傷付けることを危惧する」という懸念を表明し、すでに抗議の声は世界中に拡大している。  他方、欧州ではユニクロなどとしのぎを削るスウェーデンの世界的な衣料品専門店のH&Mが、自社のWEB 広告で、「ジャングルで最もかっこいい猿」と英語でプリントされたパーカーのモデルに黒人の少年を起用し、「人種差別主義だ」などと糾弾されている。  この問題に対して、南アでは、過激な行動で知られる野党の「経済的解放の闘士」が、ヨハネスブルクなど南ア各地の一部の店舗で襲撃事件を起こし、激しい抗議活動に出ている。当事者のH&Mはすでに広告を削除し謝罪を行っているが、「経済的解放の闘士」は、「人種差別に対して謝罪をすれば許されるという時代は終わった」などと強硬姿勢を崩してはいない。この問題も今世界中に抗議の輪が広がっている。

プライド高きスウェーデン人の本質 日本人にも差別発言が浴びせられた

 今から約50年前の1960年代後半、当方はスウェーデンの隣国デンマークの首都コペンハーゲンで、アルバイトをしながら1年余り暮らしたことがある。深刻な人手不足に直面していたかの国では、アラブ諸国から多くの出稼ぎ移民がやってきていたが、学生で観光ビザの日本人でも、雇用先を見つけそこの証明書さえあれば簡単に労働許可証を交付してくれた。当時、そうした若い日本人の貧乏旅行者が、この街には500人くらいいた。それほどデンマークという国は、外国人に対しては寛容だったのである。  しかしコペンから列車で1時間もかからないスウェーデン国境を越えると、国の雰囲気は一変した。匂いさえも違った。酪農国デンマークは例えれば始終ミルクのような甘い香りに満ち溢れていたが、スウェーデンでは病院のアルコール消毒剤のような匂いを感じた。  当時、この国は有数の鉄鋼産業を抱え、ボルボやサーブに代表される自動車産業など世界に知られた工業国として繁栄していた。  むろん所得水準も高く、40%前後の所得税や消費税を徴収し、これを基盤に「揺り籠から墓場まで」という完璧な社会保障制度を構築していた。しかし外国人の移民や就労に対してそう簡単に門戸を開くことはなかった。  休日を利用して時たま訪れた首都ストックホルムは、メーラレン湖という大きな湖の周囲に広がる美しい街だったが、人々の視線はどこかクールで、我々外国人が入り込めそうにもない「壁」のようなものを感じた。その感情は、コペンで働いていた時の同僚のデンマーク人も、スウェーデン人はプライドが高く、彼らに対してもやや上目線的な態度にうんざりすると、いつもこぼしていた。  だから今回のH&M騒動を聞いて、さもありなんと思った。あまり喜怒哀楽を表面に出さず、何を考えているのかわからなかったスウェーデン人の不気味さを思い浮かべた。  しかしながら、約半世紀前のこの当時は、人種差別や人権侵害という問題は、今ほど大きくクローズアップされることはなかった。実際、その後訪れたロンドンの街角で、「モンキー」のまえに“イエロー”と形容された英語で理不尽に罵倒されたこともあり、これはほかの日本人からも同様の体験をしたという話も聞いた。  またニューヨークでも、「真珠湾世代」と思しき老年層の人々に、すれ違いざまに「JAP!」と捨て台詞を吐かれたことが何度かあった。一般の人々さえ、アジア系や黒人、あるいはヒスパ二ック系の民族に、あからさまに差別的な態度を見せる白人が少なくなかったのだ。

先進国の人間というおごり スローライフを実践できる国

 今でこそ日本は国力も上がり、G’8のメンバー国として国際的な影響力を持つ国の一つになった。しかしそうなると今度は我々が発展途上国の人々に対して、無意識のうちに差別的な目線や態度で接することが皆無ではなくなってきている。 年中偉そうなことを言っている当方だって、ミャンマーに来た当初は、あまりにも理解不能なことが多かったので、「どうなってんだこの国は!」と、侮蔑的な口調でつい不満が口から出ることが多かった。  しかし、時がたち、ミャンマー人の気質とこの国の風土や生活習慣に慣れ親しんでくると、我々の価値観を押し付けることや、無意味な比較論を持ち出すことをやめた。この国で仕事をさせていただいている以上、「ミャンマーだから」という言葉も禁句にした。  大勢に影響なければ、腹を立てることもなくなった。「郷に従って」この国のスローライフを楽しめるようになったのだ。  もちろんミャンマーの人々は、まだ脆弱なインフラや生活上の利便性について不満を口にする。それでも彼らはそれぞれの地域や小さなコミニュティーの中で、信仰や宗教上のモラルを遵守しながら、幸せに暮らす術を心得ているようにも見える。  だから、米国大統領やスウェーデンのアパレル会社に象徴される傲慢で欺瞞に満ちた白人世界の価値観に決して屈してはいけない。ミャンマー独自の伝統文化を守りながらアジア人としての誇りを忘れずに、国造りに邁進していっていただきたい。

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