顔・人│VIP インタビュー Ma May Nyo メイ・ニョーさん PEACE SMILE LAND Co. Ltd. Managing Director

日本の大学や「トラジャル」で学んだ経験を観光業に生かす 国際感覚あふれる親日女性実業家が描くこの国の将来像 ミャンマー政府ホテル観光省に身を置きながら、日本の大学への留学に加え、あの「トラジャル」でも学んだ旅行業の専門家がこの国の観光業の改革に奔走する。女性支援にも力を注ぐ女性実業家の良心に感銘を受けた。

目次

延べ5年間も日本で勉学を 西洋人観光客激滅に立ち向かう

 素晴らしい日本語だった。訛りのない発音、豊富な語彙を含めて、これだけ流暢にお話しになるミャンマー女性は、これまでついぞ出会ったことがなかった。
 それもそのはず、今回対談にお招きしたメイさんは1996年から国費留学生として日本へ行き、日本語学校で1年間語学勉強をしたのち、立命館大学とトラベルジャーナル専門学院で都合4年間も学んだ経験があるからだ。しかも、現在の会社を立ち上げてから、再び立命館大学へ留学している。プロフィール欄をご覧になれば、その学歴の華やかさがわかる。
 「若いころから旅行業に関心があったんですよ。それでヤンゴンの大学を卒業してからホテル観光省に就職しました。日本で『トラジャル』に通ったのも、グローバルな視点で旅行業を学びたかったからなんです。」
 ご存知のように、ミャンマーでは今ラカイン州のイスラム系難民問題で国際的な批判にさらされている。そのため特にこれまでハイシーズンの主役だった欧州からの観光客が激滅している。
 「先般ドイツのベルリンで開催された旅行博覧会に行ったんですが、欧州諸国はミャンマーへの観光ツアーを販売していないことがわかりました。これはショックでした。だってそうでしょう、難民問題は国民のせいではないのに、欧州がツアーを販売中止にすれば、被害を受けるのは旅行業に携わっている一般人なのです。ツアーエージェント、ホテル業者ばかりでなく通訳ガイドの人たちも仕事が減って可哀そうなくらいです。」
 メイさんは現在ご主人と共に旅行会社を経営しているが、ミャンマー政府のホテル観光省のスタッフで「対日観光促進委員会」(DTPC)の委員でもある。つまり公私共にこの国の観光業の発展に尽力する一人なのだ。
 「数字的にはミャンマーへの訪問者数は増えています。しかし増えているのはビジネス訪問者で、観光客は伸び悩んでいるのです。だから今私たちは日本をはじめとしたアジアからの観光客に期待しているわけです。政府も日韓中からの観光ビザを廃止したり、いろいろな政策を考えています。」

観光立国として成立する資質 観光客が旅行しやすい環境を

 今年6月頃からミャンマーチャットが暴落している。最大の原因は輸入超になっているからだろうが、そこで外貨獲得の最短手段である観光業の重要性がクローズアップされてくる。毎年2千数百万人もの観光客が訪れるタイなどは、観光業収入がGDP の数%を占めるまでになっているという。
 「今から30年近く前まではタイ、ベトナム、ミャンマーは観光業に関してはそれほど差はありませんでした。でも今では大きく差をつけられています。最近はべトナムがすごいです。ミャンマーだって、こうした国々に負けない素晴らしい観光資源が沢山あります。だから魅力的な観光立国になれる可能性は十分にあるのです。」
 しかし、失礼ながらこの両国と決定的に異なるのは、ホテルや国内航空運賃をはじめとした料金の高さだろう。外国人だけに課せられる入域料、例えばバガンでは25000Ksも徴収される。こうした外国人料金も訪問客誘致にはハードルにならないのか。
 「日本の京都などでもほとんど拝観料をとられます。アジアの名所遺跡などでも入域料は必要です。だから入域料のそれ自体が問題ではなく、設備施設がきちんと整備されているかだと思います。たとえばトイレです。ミャンマーの観光地は、これが貧弱です。
 有名観光地ならそうした観光客のための設備を充実させていかなければなりません。入域料というのは、本来そのために使れなければいけません。」
 2015年あたりからミャンマーもアウトバウンドの海外旅行が緩和されてきた。当初はインドとか仏教関係の諸国に限定されていたが、現在はASEAN諸国へはビザなし渡航が可能で、日本やヨーロッパへ出かけるミャンマー人も増えてきているという。
 「私たちもアウトバウンドのお客様を扱うようになりました。でも国の経済状況が悪化すると、人々はお金を節約するようになります。そうなると、何も今無理して海外旅行をしなくとも、という消極的な流れになってしまいます。それが残念ですね。」
 今年メイさんは東京のビッグサイトで行われた「2018世界旅行博」へ行った。前記した10の旅行会社で構成されるDTPCがブースを出したためだ。毎年各社持ち回りでミャンマー旅行のブースを出すことになっているそうだ。
 「日本の方々のミャンマー旅行への関心は高いです。でもタイなどに比べたら航空ルートの選択肢が少なく、ツアー料金も割高であるという点をよく指摘されます。そうした問題点は私たちもよくわかっています。改善していかなければならないということは、ホテル観光省も十分承知しているんですよ。」

過去は過去で常に前を向いて 社員教育にも力を入れる

 日本で学び、日本の良さを体感してきたメイさんだが、日本との出会いは彼女が中学生のときに父親から贈られた「泰緬鉄道」に関する本だったという。
 「戦争は狂気です。『天皇陛下バンザイ!』といって戦死していった日本兵の話も本で読みましたが、戦争は勝てば官軍なのです。でも私たちの世代が戦争をした当事者ではないので、戦後の世代が何も卑屈になることはありません。過去は過去なのです。今でも日本に戦争責任を追及している国はありますが、ミャンマーがこれまで日本大使館の前で抗議行動をしたことはありますか。ミャンマー国民の大多数は親日的ですが、過去を引きずらないという点でも素晴らしいと思います。」
 メイさん自身も常に前を向いて生きているという。現在「KOSAN Café」などを運営するKOSAN TRADINGのMGでもあり、パートナーの岡本氏とは創業者の間柄で長く信頼関係を築いているという。
 ほかに輸出入や不動産なども手掛け、事業は軌道に乗っているが、ミャンマー女性起業家協会(MWEA)の委員として女性に対する様々な支援活動も行っている。例えば母親的な視点で教育の支援を行い、親や身寄りのない女性のサポートや起業意欲に燃える女性たちに力を貸したりしている。女性に対するドメスティック・バイオレンスなども厳しく糾弾しているという。 
 会社の規模もグループの社員を合わせると90人近くにもなっている。「旅行業が中心ですから男性社員が多く、運転手の方が主力になっています。大卒の運転手さんもいるんですよ。でも社員教育だけはしっかりやっています。なにしろお客様相手の商売ですから、礼儀作法は厳しく言っています。女性社長だとどうしてもなめられてしまいがちなので、3か月1回社内セミナーを開きます。その時の講師は私の友人で他社の社長に来ていただきます。私が直接言うより、すごい説特力があるんですよ。」
 多感な時期に日本で教育を受け、日本の良さ悪さをを熟知しているメイさんだが、日本以外に好きな国は聞くと、即座に「ヨーロッパです。」という答えが返ってきた。
 「やはり文化や芸術が素晴らしいと思います。ヨーロっパはそうした魅力に惹かれます。今年日本の旅行博でモネの『水連』の絵が飾られていたのですが、こうした西洋の絵画はミャンマーではあまり情報として入りません。余程の絵の専門家でないとわからないのです。残念ですね。」
 最後にミャンマーの観光業の行く末を案じるメイさんにとって、今後の夢は何かと聞いてみた。「私たちが大事に育て上げた実を、将来今の若い人たちが十分収穫できるようにしてあげることですね。」
 観光業に限らずミャンマーは今厳しい局面に立たされているが、彼女のように国を憂い、将来を案じる国際感覚あふれる女性実業家がいる限り、悲観することはないだろう。

<Ma May Nyo 略歴>
出身地 : Ayarwaddy 管区、
民族 :ビルマ族、仏教徒 43歳 、血液型:O型
家族 :子供 12歳、14歳 2人、夫と4人家族
学歴 :Studied Master of Economics Development 2009 at 立命館大学
Studied Tourism Management at トラベルジャーナルHospitality and Tourism College
Studied at KANSAI INTERNATIONAL JAPANESE LANGUAGE INSTITUTE
Studied Economics at 立命館大学 ( 琵琶湖草津キャンパス)
Studied Organization Development in School Administration at Assumption University (ABAC) Ph.D program
職歴:Director at KOSAN Trading Co.,Ltd
Owner and Founder at KOSAN Service Apartment
Director at Peace Smile Land Co.ltd Japan
KOSAN Rubber Plantation
Worked at Ministry of Hotels and Tourism
趣味:植栽、鉢植え、旅行(実際に体験してそれを書いて人々に伝えたい)
将来の夢: 将来的には旅行業に関わる者として国家の観光業促進に貢献したい。日本人読者へのメッセージ:実際ミャンマー
まで来てください。この国の美しさをご自分の目で見ていただきたい。ヨーロッパからの観光客が減っていることもあり、
日本をはじめとしたアジアの観光客が増えることを期待しております。旅行業で培った果実を次世代の方々が収穫できること
を希望しています。

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