第13回 ミャンマー人の肖像 U Tsit Naing ZWARE GROUP Managing Director

土地選定からアフターまで自社で責任を持つ一貫体制 この国では稀有な高い意識を持つ建築業界の革命児か

目次

 「Builder Group」という建設会社を核に、建材などの製造や輸出入を行う「DEARCH」、さらに設計デザイン、内装、インテリアコ―デイネートを主体とする「LiveLife」に投資業務を一手に担う「MBIG」という4つの会社を率いるZWARE GROUPの総帥であるTsitNaing氏はまだ37歳の若さながら、建設業者の域をはるかに超えた建築プロデューサーといった形容が当てはまるほどの哲学とポリシーを持つ男である。
なにしろグループでは、建設依頼のオファーが来ると、土地の選定からデザイン、設計、内装、インテリアからアフターメンテナンスまで一貫体制で事業を行っているからだ。通常はデベロッパーを中心に分業制で建設依頼に対応していくが、彼はこの考えを捨てた。一から十まですべて自社グループで行うシステムを構築したのだ。これはミャンマーでは画期的なことだろう。
 「可能な限り質の良い素材と技術で建築を行い、しかも価格的にも納得していただくにはこれしかありません。下請け業社を使えばそれなりにコストは上がるし、建材や内装備品などの質にもなかなか目が行き届きませんから。」
 依頼主のオファーに沿った土地選定し、そこにグループ会社の「LiveLife」が建築設計をプラニング。そしてそれにふさわしい建材や備品、インテリア素材を自社で製造、輸入している「DEARCH」が取り揃える。むろん建設は「Builder Group」が主導していく。引き渡し後のアフターメンテも同社が責任をもって行うという。
 「私たちは独自の家具工場を持っています。そして同時に良質の材料も輸入しています。例えばオリジナル高圧ラミネート素材として知られる『Formica』に早くから注目し、この国では唯一の販売代理店となりました。
 2011年にはプレミアム品質の製品供給業者とみなされ、今では『Dunlop Adhesive』や『Häf ele Furniture and ArchitecturalHardware』」といったブランド製品の輸入もしています。」
 同社の創業は今から10年前の2008年。2010年にテン・セイン政権による民政移管がスタートし始める少し前のことだった。ミャンマーのユーザーに対して合理的な価格帯で最高品質の製品とサービスを提供していこことを最大の企業理念に掲げてスタートした。まだ軍政時代に若冠27歳の青年のこの発想は凄いといわざる負えない。
 その後ミャンマーには建設バブルが訪れことになるが、良かれ悪かれとブームに乗って理念もなく参入した建設会社の中には、ブームが去ると姿を消すところも少なくなかったが、「Zware Group」は反対に毎年成長を遂げていった。むろん早くから素材の品質にこだわってきた建材や部品製造及びインテリアのソリューション事業も順調に推移している。
 しかし創業当初は苦労の連続だったという。
 「なにしろ2008年当時は、プレミアムな建設のための優れた建築材料の選択肢が非常に限られていました。そこで思案の挙句こうした質のいい製品を供給していくために自社工場と輸入会社を立ち上げたのです。またお客のニーズと満足を得るために当社独自の強いコミットメントを構築しました。『Live Life』を立ち上げたのその一つです。現在ここには102人の従業員と最高のサービスを顧客に提供する72人の技術者がいます。」
 AMID(ミャンマーインテリアデザイナー協会)と協力して、建築インテリアに関するセミナーなども数多く行った。インテリアデザインに関心のある方々に知識と理解を得てもらうためだ。
 セミナーといってもその内容は非常に濃いものだった。たとえばインテリアデザイナーの Nay Aung Lwin氏は、『自分の人生を創る』というタイトルで、現代の家具と人間の人生について発表した。また- U Kyaw Moe Wai氏は 『模倣とインスピレーション』」と題して、最近のミャンマーのインテリアデザイナーがネットからデザインコピーして創造性が欠如していることを指摘した。

 また実弟が主体となって「Live Life」という月刊の建築雑誌も創刊した。CityMartなどで販売されるこの雑誌は、日本でいえば「新建築」のような非常にレベルの高い建築雑誌である。
 こうした啓蒙活動は具体的な行動を伴った。数年前から「DEARCH]では、数多くのショウルームをヤンゴン各所に常設してきた。機能性と芸術性のバランスを取り、人とは違う個性的な建築物を建てたいと希望する方々にその良さを実感してもらうためだ。
 「ミャンマーとて時代の変化ともに、お客のニーズも変わってきています。そうしたユーザーの変化に応じて、素晴らしいプロジェクトを実現させることが我々の使命だと考えているんですよ。」そうした真摯な姿勢が、前記した『Formica』の販売代理店契約につながった。ちなみにニュージーランドに本社を置くこのブランドは、創業100年を超す世界的なラミネート材のブランド会社である。
 こうまでかたくなに品質とデザインにこだわるTsit社長の原点はなにかと聞くと「叔父が建築関係の仕事をしていました。だからいつも建築物を見て育ちました。小さいころは自分も大きくなったら建築の仕事に就いて家を建ててみたいと思うようになったのです。」
 しかしそうは思っても、ここまでレベルの高い意識を持つようになった背景には、やはりシンガポールとオーストラリアの大学で建築工学を学んだ経験が大きい。家庭環境には恵まれていたが、海外で習得した経験と知識を自分なりに昇華させ、母国の建築界のために役立たせたいと努力する彼の意識は、今後のミャンマーの若者にぜひ見習ってほしい理想的な姿勢だろう。
 「私どもの会社では日々技術の向上とそのトレーニングを怠ってはいません。私の今後の目標は、若い技術者の人材育成です。この国には埋もれている人材や勉強したくてもチャンスがない若者が沢山いると思うんです。だから少しでもそうした人たちの力になれたらいいなと考えています。」
 建築に関してはどこまでも熱き情熱を持った人なのだろう。日系をはじめとした海外資本の建設会社が多く進出し、大きなプロジェクトが始動し始めているミャンマーでは、こうした高い意識を持った建設会社が数多く出現してくることを願うばかりだ。

Tsit Naing プロフィール 略歴

Mr.Tsit Naing is a Managing Director at Zware Group Co.,ltd ,Yangon,Myanmar. He is also a Principal Architect at De Arch in Yangon,Myanmar and founder of Zayat Co-Working Space.
As his educational background,
he got his first Diploma in Intelligent Building Technology (2002) in Temasek Polytechnic (S’Pore) & graduated his first Bachelor of Planning & Design (Architecture) in University of Melbourne (2007)
As his professional career background,
- Space Planner at Vanguard Interior S’Pore
- Architectural Assistant at DP Architect S’Pore
- Design Executive at Ciseern S’Pore
- Interior Designer at Cube Associate Design S’Pore
Now he founded his own De Arch Architectural Design Firm & working as Principal Architect at De Arch, Myanmar.

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