今月視点 僧院の孤児たちの支援に行動を起こした在住邦人の善意に続け

やっと雨から解放された感がある。先月の後半から、ゴルフ日和のような晴天で目覚めることが多くなってきた。しかし晴れたら晴れたで日差しは半端ではないからやっかいだ。勝手なものでミャンマーでは雨だ天気だ猛暑などとぶつぶつ言いながら1年が過ぎていく。

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1200人もの孤児を支援する僧院 月の食費だけで120万円もかかる

 やっと雨から解放された感がある。先月の後半から、ゴルフ日和のような晴天で目覚めることが多くなってきた。しかし晴れたら晴れたで日差しは半端ではないからやっかいだ。勝手なものでミャンマーでは雨だ天気だ猛暑などとぶつぶつ言いながら1年が過ぎていく。
 しかしこの雨期のうっとおしい気候とは裏腹に、最近実に爽やかな出来事に遭遇した。弊紙7月号の発見ページで掲載した「ヤンゴン川向こうの不思議な世界へ日帰り旅」というDalaの町を取材した記事に感動して行動を起こされた在住邦人がいた。
 記事中で国内の内乱や災害などで両親や家族を失った孤児たちを引き取り、面倒を見ている「LaeKyaungPayiyattai」という僧院と僧院長の話が載った。
 この僧院は今から24年前に創設され、当初は僧侶のための教育を行っていたが、次第に一般人の学校へと変わっていき、毎年高校生まで1200人もの生徒を抱えるまでになった。
 そして驚くのはほとんどの生徒が行く当てのなかった孤児たちで、その面倒を僧侶1人で見ているということだった。もちろん政府にも支援を要請したが、制服や教科書支給が精一杯だった。何しろ先生だけでも20人はいる。1人3万6千Ks(約3100円)という基本給はかろうじて援助してもらっているが、後の食費とかの経費はすべて僧院長の裁量で市民からの寄付などで賄っている。食べ盛りの子供たちだから、どんなに切りつめても1200人もの子供たちを養うには、1日4万円、月に120万円はかかるのだという。
 ちなみに受け入れている子供たちは仏教徒の他にイスラムやカトリック教徒もいるという。僧院長は「どの宗教を信じても構わない。勉強だけ頑張ってくれるならそれでいい」という慈悲深さで、国内各地からの孤児たちの支援に励んでいる。

在住邦人がついに手を差し伸べた ミャンマーのためにないか恩返しを

 この記事が、ヤンゴン北西部で長らく縫製工場を営むOさんの目に留まった。そしてある日Oさんが編集部にやってきて、この僧院に寄付したいという申し出を頂いた。そこで実際に取材して執筆した弊紙ミャンマー人編集者を交えて話し合いを行った。
 取材した経緯、話の信ぴょう性などをご説明すると、Oさんは納得なさり、一度編集者と共に現地へ出向き、僧院長に面会して趣旨を説明することになった。そのうえで寄付の実行を約束することになった。
 9月の某日、OさんたちはDalaへ向かい、僧院長に面談した。7歳で僧侶になった院長は現在59歳になるが、この活動を引き継ぐ弟子がまだ見つかっていないため、それを非常に危惧なされていたという。
 Oさん一行は院長の案内で約7エーカーの敷地の中に20棟もある学校を見学した。子供たちが元気に学んでいた。僧院長のお話も記事の通りだった。そこでOさんも納得された。
 そして1億チャット(約870万円)という驚くべき寄付金額の申し出を行った。僧院側も仰天したという。そこで僧院側からOさんへの感謝の記念碑を作りたいという話が出たが、この申し出をOさんは丁重に辞退した。
 「ミャンマーで仕事をさせていただいて多少の利益も上げています。その意味では何かこの国に恩返しをしたいと考えていたところなんです。院長のお話しを聞いて不幸な子供たちのために役に立てていただけるのならと思い、申し出をしました。私の名前なんかどうでもいいのです。」
Oさん実に謙虚に淡々とその動機と思いを語った。こうして記事で公表することさえ当初は乗り気ではなかった。ご自分の名を極力公にはしたくないという硬い決意だった。そこであえて実名を控えさせていただいた。

様々な問題に直面するミャンマー 民間人が少しでも救いの手を

 今、ミャンマーは様々な問題を抱えている。経済面ではチャットの暴落、政治面ではラカイン州の難民問題、社会面では取材記者の逮捕、実刑判決への内外からの厳しい批判、電力問題、ヤンゴンのインフラなど、現政権が直面している問題は一長一短では解決できぬものばかりだ。
 こちらに進出している邦人企業や飲食店の方々も、なかなか軌道に乗せらずに苦慮しているケースをよく耳にする。正確な実情も知らずに「アジア最後のフロンティア」などという歌い文句につられてやってきたはいいが、ミャンマーでビジネスを成功させるには一筋縄ではいかないことを体感している方も少なくない。
 チャットで商売をし、住居や事務所家賃をドルで支払っていたのではたまらない。好物の和食ランチを食べたいと思っても、渋滞の中でタクシーを使ってまで行く気力は湧かない。どうしても近場で手軽に済ませてしまいがちだ。それに国内航空運賃をはじめとした外国人料金というダブルスタンダードの料金体系が続く限り、国内ローカルへの旅も躊躇してしまう。
 そうした厳しい経済、社会情勢の中でも地道に努力をし、事業を軌道に乗せているOさんのような方はいる。ジャパンハートや名知先生やAAR Japanといった医療活動やしょう害者支援活動を長らく行っている善意の邦人や組織もよく知られているが、在住邦人の皆さんは、何かミャンマーためにしたいと思っている方がほとんどだ。
 しかし民間人がその気持ちを行動で表すには相当の勇気と決断がいる。弊紙ではO さんの善意を無駄にしないために、この寄付金を基金化し、Dala 地区の僧院だけでなく、ミャンマー国内の不遇な方々への支援に役立てられないものかと、考えている。
 ヤンゴンプレスも創刊して5年半が過ぎた。私たちも常々何かミャンマーのためにお役に立つことはできないだろうか、という意識を持ち続けてきた。
 Oさんとご相談をさせていただいたうえで、この貴重な浄財を広くミャンマーの不遇な人々のためになるようにシステムを構築していきたい。明確になったらまた次号でご報告します。皆様からのご支援もお待ちしています。

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