特集 「ミャンマーの深層」ミャンマーのそこが知りたい 伝統芸能「操り人形『Myanmar String Puppet』の世界」 後編

前号では日本の文楽にも通ずるミャンマー操り人形界の “人間国宝”ともいえるU Sein Htun Kyi師匠のお話しを中心に、王朝時代から引き継がれる素晴らしき芸術について紹介した。今回は師匠の息子さんたちや専用劇場の創設を夢見る大御所の方から活動状況などについてお聞きした。 Shwe Myanmar 伝統芸能 09 - 730 18265 , 09 - 4290 70881 Htwe Oo Myanmar 人形芸能団体 09 - 962 211 942

目次

時代のニーズに合わせて 公演内容も変化

 U Sein Htun Kyi師匠の息子さんであるU Sein Aye Myint先生が操り人形の現状について説明してくれた。最近、この伝統人形芸能は、パゴダ関連の祭り、民族舞踊やオペラなどの催しものにも出演する機会が増えたという。また商品の宣伝やCMなどにも声がかかるようになり、ミャンマーの教育における題材として使用され、さらに映画などからもオファーが来るようになったという。
 例えばNGO団体の「Educational Entertainment」などでは、健康キャンペーンや、経済に関する告知をする際に、この操り人形を背景に使用したりもしているそうだ。だから時代のニーズに合わせて、従来の殻を破り、モダンに工夫することも必要で、逆にそれが人気を盛り返す要因にもなっているという。
 伝統芸能については操り人形のみならず、竪琴、マンドリン、バイオリンなどの古くから伝わる古典芸能や民謡、民族舞踊などのコンサートが数多く開催されるようになり、国民の間で再び関心が高まってきている。だから「伝統は大事にしていかなければならいのです」と、息子さんは強調した。

 息子さんは「Than Lwin私立高校」で、伝統文化コースの教鞭をとる先生でもある。1028人もの生徒に教えているから疲れるが、とても励みになるという。
 これまで人形劇に関わる芸人たちに対してミャンマー政府からまだ支援はないが、政府のバックアップで土地が確保できれば、文化財としてさらに発展させていくことができるという。
 「人形芸能は国の財産です。もしヤンゴンに操り人形専用の劇場を作ることができれば、人々はいつでも気軽に観劇できるし、文化財保護や芸人の育成にはとても効果的だと思います。
 私は父の芸を引き継いで公演しているし、伝統文化についてもきちんと教えている教師でもあります。だから生徒たちから伝統芸能について質問が出ると、本当に喜びを感じます。若者たちに興味を持ってもらい、次世代にこの貴重な芸を伝承していくためには、私たちが老骨にムチを打ってさらに啓蒙していかなければならないのです。時代や制度に関係なく伝統を守り続けていくことが大事だと思います。」と息子さんは語る。

ちなみにU Sein Htun Kyi氏とU Sein Aye Myint氏の公演を観覧希望の方は、下記へ。
「Shwe Myanmar 伝統芸能」
09- 730 18265 , 09- 4290 70881
youtube.com Search : U TunKyi

伝統を守もりながら レベルアップさせる努力を

 ミャンマーの伝統芸能は、現在、観光業に頼っていると、もう一つの大きな人形劇団体「HtweOo Myanmar 人形芸能団体」のU Khin Maung Htwe 氏はいう。
 「この仕事は収入がよくありません。有名になるチャンスも少ない。私自身逃げ出したいと思ったことが何回もありました。現在は観光的要素が強く、それでかろうじて継続できているような気がします。」
 氏も相当この芸能にのめり込んでいる一人だ。かねてから専用の劇場を作りたいという夢を持っており、その努力もしてきた。
 「私は親からこの芸を継承したわけではありません。1983年に海洋大学に入り、卒業後は2002年まで船乗りをやってました。それから2005年まで旅行会社で運転手の職に就き、国内を回ることができました。船乗り時代に外国で見た人形劇に感動し、ヤンゴンにも専門の劇場が作れないかと思い始めたのです。」
 それから、2006年にBotaTaungKannar通りの森林組合の建物11階を借りて伝統芸能の劇場を始めたという。
 その後2008年には知り合いになったドイツ人のMascareさんの招待でスウェーデンへ行った。そこでエンターティメントについていろいろなことを学んだ。彼は芸術に関する博士号を取得したほどの方で、とても熱心にアドバイスしてくれた。集客から公演方法まで、観客をどう引き付けたらよいか、順序立てて説明してくれた。これは本当に勉強になったという。
 そして2008~2009年にかけてシュェダゴンパゴダの近くで念願の劇場を開いたが、この時にナギスサイクロンに見舞われ、悲運にも人形が全て破損してしまったという。それでも、彼はあきらめなかった。
 2009年から2010年まではヤンゴンのアジアプラザホテルで、2011年はカラウェイパレスで、そのあとはフランス、ドイツ、オランダ、オーストラリアなどへ行った。公演は順調に進んだ。その後はスーレーパゴダ通りで1年近く劇場を常設して公演を行った。ここでやった時が最も多くの観客が詰め駆けたという。しかし家賃が高く、同じ場所で続けるのは非常に困難だった。

 現在、操り人形はエンターティメントとしてだけではなく、教育教材用としても使用されてきているという。U Khin Maung Htwe氏の場合は、お寺や孤児の面倒を見ている学校などでも慰問を兼ねて公演しているという。その時には毎回公演を始める前に、この伝統芸能の歴史を教えるようにしているそうだ。
 「ミャンマーの人形は操っている芸人がこ黒子として隠れたりはしていません。それなのに、操り手の存在を忘れさせて、まるで人形が生きているように自由に演技しているように見せるのが重要です。また、芸人は伝統を忘れてはいけません。観客の要望はもちろん大事でですが、それだけにとらわれて伝統を逸脱してしまうのはだめです。」
 現代風にアレンジした粗筋やモダンな舞台セッティングなどは大歓迎です。もちろん演奏だけの場合もあります。例えば、昼間に現代風のショーをやり、夜は伝統芸能に終始するスタイルをとることもありますね。海外公演は2008年から今年まで年に3回程度行っているので、すでに30回を超えました。前にお話ししたヨーロッパのほか、ドバイ、アメリカ、東南アジアなどへも行っていますが、この場合も政府からの支援はありません。」
 タイのチェンマイでは「The Four Puppets」という題名で3週間も公演をした。この時は伝統音楽ではなくてピアノをバックミュージックに使った。また「Home」と題した5か国に渡る公演では、人形の操り方も通常とは違ってきたので面白かったという。
 「Htwe Oo Myanmar グループ」は、国際的な人気の旅行ウェブサイト「Lonely Planet」でも大きく紹介されており、トリップアドバイザーはヤンゴンの観光地として紹介している。
 「今まではやはりヨーロッパからのお客さんが多かったですね。国内では南部のコ―タウンを始めサガイン、バゴー、タウングー、エーヤーワディーなどへも行きました。」
操り人形の伝統芸能は、レストランで食事しながら観劇するエンターティメントとは異なる。代々受け継がれてきた国家の宝だ。だからこそ末永く守っていきたいし、純粋に観劇してほしいそうだ。
 「夢はもちろん伝統人形の博物館を作ることです。芸術というのは、自分たち守っていかないといけません。日本にも文楽という芸術があります。操り方はちょっと違うかもしれませんが、見る方に愛される芸能という点では同じです。ミャンマーの操りも難しく奥の深い芸能です。皆様方にもぜひ一度見学していただくことを希望しています。」
 「Htwe Oo Myanmar」 人形芸能を観劇したい方は、
No.12, First Floor Yarma Rd Near Ahlone Market Ahlone Township Yangon .
09-962 211 942 www.htweoomyanmar.com
入場料は大人1万ks。10歳以下の子供は5千ksで、公演時間は45分。

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