◎Deep in Myanmar ミャンマーの深層  日常の中の疑問符 ミャンマーのそこが知りたい「ミャンマー人と血液型にまつわる話」

英国のオックスフォード大学の研究チームが1976年に発表した「The Distribution of Human Blood Group`76」(人類の血液グループの分布`76)という世界の血液型分布データがある。

英国のオックスフォード大学の研究チームが1976年に発表した「The Distribution of Human Blood Group`76」(人類の血液グループの分布`76)という世界の血液型分布データがある。43年前の古い調査だが、現在でもこのデータが世界の血液型分布を語るときには必ずと言っていいほど登場する。  毎年増加する人口の調査などと違って、血液型調査はいわば確率データであり、数の推移によって大きく変動することはない。そのためウィキぺディアなどの血液型分布の資料でも、このオ大の調査データが引用されている。  しかし、いくら権威ある学術機関といえども、世界200か国近い国々の血液型分布を、一体どうやって調査したのだろうか。調査対象国へ出向き、ある程度の人数の人々の血液型を尋ね歩いたのだろうか。それともアンケート調査を実施したのだろうか。  このあたりの経緯が不明なので全面的に信頼していいのかやや不安になるが、いずれにしても公的機関が発表した分布データはこれぐらいしかないので、このコーナーでもまずこの調査データを参考に分析を進めてみる。  ミャンマーではこれまでB型人間が圧倒的に多いのではと喧伝されてきた。しかしオ大のデータによれば、意外にも一番多いのはO 型で35%、次いでB 型の32% になる。そしてAが25% , AB が8% という割合だ。ちなみにアジア地域でB型が最大多数を占めるのはインド(40%、O 型31%)で、次いで隣国のバングラデシュ(39,8%、27,6%)の順になる。  これは意外だった。またお隣りのタイはO型39%、B が33%だが、フィリピンはO が44%、B が24%の分布で、フィリピンの場合はやはりスペイン(O型44%)系の血が入っているからなのだろうか。  日本人の場合はご存知のようにA型が38%、O 型が31%、B 型が22%と、AO で約7割を占めている。日本赤十字社大阪府赤十字血液センターの発表でも、血液出現率がA が4割、O が3割、B が2割という確率を示している。また、米国(白人系)と北ヨーロッパ諸国も、やはりA,O 型で7~8割を占めるAO大国だ。 ミャンマーがOB型の国だったとは、本当なのかと思う方もいるかもしれない。失礼ながらお人よしで短絡的に行動するミャンマー人の性格は典型的なB型だろうと考えがちだ。しかしそもそもミャンマーには血液型と性格を結びつけて診断するなんていう制度や習慣はない。いやこの国に限らずア セアン諸国にもないのだ。  血液型に関しては、オーストリアのウィーン大学で病理学を研究していたC.ラントシュタイナー氏が、今から106年前の1901年に血液型の相性(混ぜると固まるという反応)関する研究を発表。この研究でそれまで頻発していた輸血の不適応性や副作用による事故が激減したという。  しかし、当時はまだ血液型と性格に関する研究は行われておらず、この因果関係について先陣を切ったのは、何と日本人であった。それから10年後の1916年に原来復(はら・きまた)氏が、「血液ノ類属的構造ニツイテ」という著書を表し、その中で血液型と性格について、なんらかの関係性があることをほのめかしている。  その後、「血液型」と「性格」というものを初めて結びつけて本格的に考察したのは、戦後のフランスにおいて心理学者でもあったL・ブールデル医師とJ・ジュネベという心理学者であった。2人の協同研究で、約2,500人を対象に相関関係を調べ、「血液型と気質」という表題の本を世に出した。  するとこれがたちまち評判を呼び、世界中で「血液型占い」という形でトレンド化していった。  しかしブールデル医師らは、血液型と人間の性格との因果関係を科学的証明することはなかった。そしてこの「血液型占い」熱はしばらくして冷めてしまったが、日本人だけが何故かこの「血液型占い」に根強い関心を持ち、2,000年頃には再びTVでクローズアップされるようになった。最盛期には「科学」を掲げたTV番組でも取り上げられたりもしたが、その後、人気番組の「発掘!あるある大事典」でヤラセ問題が発覚し、血液をテーマにした番組は激滅した。  しかしながら、血液型と性格には本当に因果関係があるのだろうか。たとえば俗にA 型は几帳面だとか、O 型は辛抱強いとか、B型はポジティブ思考だとか、今日本で喧伝され、定着している血液型性格診断などは、本当に根拠があるのだろうか。  結論から言うと、確たる根拠はないそうだ。それは過去歴史的に科学的な証明がなされていないという事実が根底にあるからだ。ご自分の周囲を見ても、その血液型の性格定義に当てはまらない人間はいくらでもいる。これまで因果関係を統計学及び学術的に研究した調査はいくつかあったが、その研究結果は「関係ある」、あるいは「ない」など、大きなズレが生じ、バラバラであった。しかも他のの全ての血液型を無視して、ABO式の血液型だけに焦点を当てるのも科学的ではなかった。  人間には他人や周囲から性格を定義づけられたり、言い含められたりすると、次第にその方向に染まっていく現象がみられるという。これを「ピグマリオン効果」というそうだ。ギリシャ神話に登場するピグマリオンという男性が石像を溺愛し、毎日この石像を本物の女性のように崇めていたら、神の力でその石像が本物の女性になったという話が由来になっている。  我々の日常でも、ある子どもが何か失敗をやらかし、そのことをとらえて「慌て者だから」というレッテルを貼り、毎日周囲に言いふらしたりしていると、その子供は「自分は慌て者なんだ」と思い込み、それに即した行動を取るようになる。周囲の人間も「彼は慌て者」だからと助長し、彼を増々そうした性格であるかのごとく追い込む。万が一、その子どもが最初の失敗で大いに反省し、以後注意深い人間いなれた可能性があるにもかかわらず、そのチャンスすら奪われてしまう。こうしてその子供は本物の「慌て者」に仕立て上げらてしまう。  日本で一大ブームを起こした血液型性格診断も、この「ピグマリオン効果」が影響していることは否めない。連日TV で「A型はこういう性格だ」「B型はこうだ」とあたかも信ぴょう性のある学説ごときのことを吹聴されると、視聴者は凄まじい「ピグマリオン効果」にさらされる。そして少しでも該当する節が見当たると、「自分はA 型だからそうなんだ」と思いこみ、日本中の方々が本来もっている性格を矯正(きょうせい)されていく。  しかし、これまでは「血液型占いには根拠が無い」という論調が主流を占めていたが、科学の進歩とともに、「やはり因果関係があるのでは」という主張も増えてきた。東京医科歯科大学医学部名誉教授で人間総合科学大学教授の藤田紘一郎先生は、自身の著書『血液型の科学』(祥伝社)の中で、「血液型と性格は医学的に関係がある」と述べている。その根拠として、次の理由を挙げている。 (1) 血液型によって免疫力が異なる (2) 血液型ごとにかかりやすい病気とかかりにくい病気がある (3) その結果、仕事の役割や生活スタイルが形づくられた  具体的にはA型は免疫力が弱く、病気にかかりやすいため、人間関係に用心深くなったという説。しかもA型のルーツは農耕民族であったと考えられ、計画的に作物を生産する生活スタイルが几帳面な性格を形成したのだという。  反対に、免疫力が最も強いO型は開放的でチャレンジ精神が旺盛な性格になったという。また、B型も免疫力が強いためO型と似ているが、肺炎やサルモネラ菌に弱く、人込みの中には入らず、独特な性格が形成されたそうだ。AB型はA型以上に免疫力が弱く、人と会うことを避ける生活が定着したため、疑い深く内向的になったのではと推測している。  これまで因果関係についてあるのかないのかを検証してきたが、前記の藤田先生のように具体的な根拠を提示すれば「ある」と説得できるかもしれないが、その反対の証明は極めて難しい。「血液型と性格との因果関係はない」という科学的な証明は、肯定論に比べて非常にやっかいで難儀だからだ。  ミャンマーはB型が大多数を占める国、という根拠のない喧伝を信じてきた方も少なくないと思うが、こうなると、果たしてB型人間が血液型性格診断なるもので言われているような特色を持っているのかさえ懐疑的になる。

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