新連載 ミャンマーの税制・・・Part-2「ミャンマー商業税と仕入控除制限」 

外資はこれまで卸、小売りが原則禁止され、また製造活動もあまり活発化していなかったので、商品や製品在庫と商業税の関係については、さほど問題にならなかったかもしれない。しかし今後、卸・小売りが解放され、外資の生産活動も活発化してくると、在庫や販売不能商品について、商業税の取扱いが問題とならないのか、若干気になる。これまで具体的な問い合わせや指摘等を受けてはいないが、ミャンマーの法令や運用面で気になる取り扱いがあるようで、以下見てゆくことにする。

目次

1.卸・小売りの規制緩和と仕入控除

 仕入控除に関する規則の改正により、現在では、①売上原価のみならず販管費もFORM31等があれば、原則控除可能となりつつあり、②控除時期もその課税期間中の仕入税額をインボイス(FORM31)の発行月において控除することとされ、また③サービス業にも仕入控除が認められ、従来に比し、仕入控除の範囲が拡大しつつあります。
 特に販管費などでも、支払先からFORM31及び支払先が商業税登録証明書のコピーを入手すれば、仕入控除を認める運用がなされているようであり、その意味で広告宣伝費や不動産の賃貸料などが控除対象となってきます。

2.ミャンマーでの仕入控除の基本的性格

 まず初めに、商業税の性格につき見ておきます。

●商業税法9条:

 「どんな財の製造・販売又はサービス提供に対しても、一度だけ課税されることを規則に従って、定めることができる(弊社での和訳)」
 つまり仕入控除は商業税法に基づくものではなく、「規則」(財務省が制定)というより下位の法令により、定めることが「できる」となっており、行政府に一定の裁量権が与えられております。この意味では、仕入控除は、法律上認められた納税者の権利ではなく、必ずこれを規定しなければならないものでもないといったことになります。財務省及び課税当局により、その取扱いの詳細を決定してもらう形になっているようで、これが法令面から見た仕入控除の現状ではないかと思われます。

3.「一度だけ課税されること」の意味?

 商業税は、確かに事業者が納税し、申告しておりますが、しかしもともとは事業者に税負担を求めることを想定しておりません。商業税は一連の取引の流れの中で、次々と売上先に税額が転嫁され、最終的に消費者が負担する税であり、この仕入控除が付加価値税のもっとも根幹をなす部分と言われております。売上げに係る商業税から仕入れに係る商業税を控除した差額を納税(又は還付)しますので、途中の中間事業者間で税を負担しない仕組みを予定しております。「一度だけ課税されること」とは、仕入れ税額控除により差額納税することにより、事業者が商業税に関し損得のない仕組みを意味しております。
 その意味で、通常であれば、商業税法に仕入控除を保証する規定が置かれるのですが、実際はそうはなっておりません。

3.仕入控除の特徴及び問題点

 以上のように、ミャンマーでは仕入控除が法律に基づき保証された権利ではないため、控除が大変不安定な状況におかれております。
 しかしながら、一方で既存の仕入控除に関する財務省規則の中には、他国にはあまり例のない控除の制限規定があるようであり、今回はそこらの問題を具体的に見てゆきたいと思います。

4.仕入控除の制限

事例1
期末に商品1000万が在庫として売れ残った。これに係る商業税50万に関し、既に会社は仕入控除の対象としておりますが、何か問題はありますでしょうか。

問題点:
 販売しなかった商品に含まれる商業税は、控除できない(商業税規則42条10項(規則18/2016)参照)。これは、文字通り商品だけなのか、製造会社の製品・仕掛品にかかる商業税も控除できないことになるのでしょうか。またサービス業であっても提供を受けた役務費用の支払いに関し、会計上期末仕掛品の認識が必要となるケースもあります。規定はともかく、運用はどうなっているのでしょうか。技術的に可能なのでしょうか。

事例2
期末に商品棚卸を行ったところ、以下の事実が判明した。仕入控除できますでしょうか。
①1000万相当の在庫が紛失していることが判明(商業税は50万)
②湿気とカビによって、在庫600万相当が販売不能(商業税30万)

問題点:
 製造業、販売業、サービス業にあって、「被害を受けた商品」の仕入控除はできない(同上規則参照)。また仕入控除のFORM33(相殺報告書)でも、消失した商品の控除はできないと記載されております。本当にこうしたことが、実務面で行われているのでしょうか。

事例3
固定資産の購入した際、商業税5%を支払いました。仕入控除はできるのでしょうか。

問題点:
 控除できる商業税には、固定資産の取得時に支払った商業税は含まれない(規則42条4項)。この場合、固定資産の取得価格に算入され、商業税は減価償却を通じて所得計算面で費用化され、仕入税額控除はできないとする取扱いとなっております。

5.在庫商品及び紛失・販売不能商品の仕入控除

 上記事例1、2の通り、在庫商品及び紛失・販売不能商品の仕入控除は、規定上、認められておりません。なぜでしょうか。課税当局からの見解は何ら公表されておりませんが、法人税の所得計算に準じて、売上総利益を算定にための売上げ・仕入対応原則が念頭にある可能性も考えられます。つまり、実現した売上に対応した仕入税額のみが控除対象(原価となり)とされ、未実現の売上や今後売上げ計上のないものは、売上げに対応しないため控除は認めないとするとする、売上げ総利益算定の概念です。
 このように在庫や紛失商品等に対する仕入控除の否認という考え方は、商業税が準拠しようとしているVATや財務省規則との関係で、問題はないのでしょうか。
 なぜなら商業税は、仕入れ売上げといった一連の取引段階で、差額納税を通じ税の転嫁がスムーズに行われてゆくことが本来の商業税の生命線であるはずであり、課税仕入れ商品が実際にその後に売上げられたかどうかは、全く無関係だからです。課税取引である限り、売上げとの対応関係は、仕入控除の要件とはされておりません。
 また改正後の財務省規則も、仕入控除の時期は、その課税期間中に発生した仕入税額を(そのインボイス(FORM31)の発行月で)控除するとしておりますので、売上げ・仕入の対応を要件としてはおりません。
 実際問題として、在庫商品及び紛失・販売不能商品に関しては、本当に規定通り仕入控除を制限する運用がなされているのでしょうか、法令等を整理し、実際の運用とも極力一致させる必要があります。

6.固定資産の取得と仕入控除

 最後の事例ですが、これは商業税の取扱いと税務・会計理論との整合性の話です。固定資産の取得価格は、その資産自体を取得・利用のために必要な支出として、減価償却を通じて、適正な利益・所得計算を確保する観点から定められております。資産取得時に支払った商業税をその資産の取得価格に含めることについては、例えば個別商業税等特定の品目に課税され、仕入控除がない税は、そのまま国に納税されてしまうため、資産の取得価格という考え方が出てきますし、関税等と同様です。しかしながら、固定資産の購入時に支払った商業税は、個別商業税とは異なり、そのまま国に納税されるわけではなく、そう納税額は、売上げ時に預かった商業税とを相殺した残額です。もともと商業税は売上げ時の預り商業税と仕入時の預け商業税、すなわち仮受金と仮払金にほかならず、中間事業者自らが負担することを想定しておりませんので、取得物件との関係は大変稀薄です。商業税法は必ずしも会計・税務理論との一致が図られるわけではありません。しかし、適正な所得計算のため、あるいは商業税の本来的な性格から、商業税を固定資産の取得価格として減価償却すること、固定資産特有の仕入控除の取扱いに関し、今後議論の対象となる可能性も考えられます。

ヤンゴン通信―7

先月10月中旬のある日、突然、たまたま事務所内にいた職員が全員、私の部屋に入ってきて、即カーペットにひざまずきました。最前列の一人が「先生、この1年間いろいろ至らぬところが色々ありましたが・・・・」と初め、床に額がつくような形で手を合わせて、皆さん私にお辞儀をしだしました。一瞬、新興宗教の教祖様にでもなったような感じでしたが、何だか恥ずかしく、言葉が思いつきませんでした。 「タディンジョ」といって、10月24日をはさんで3日間、会社も休みとなり、自分の親、年長者、恩師等に対しお供え物を差し出す習慣があり、そのことでした。
 プレゼントを二ついただき、今も使わせていただいております。ただ、どうもお返しが必要とのことで、実際はこの後が大変なのかもしれません。
 職員が40名ほどのある会社のある責任者の方も、全員から集めたお金でお供え物をいただいたようで、約40人分のお返しをポケットマネーでしているとのことでした。40人もいる会社の場合、何回も続きますと、拝まれた方がありがたいのか、個人差がでてくるかもしれません。

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