今月の視点 チャット危機回避は外貨獲得の早道の観光業への意識改革から

9月も間近になって、ようやく雨期の峠が過ぎ去った感がしてきた。しかし今年はやけに雨が多かった。例年ならお天道様が覗いている間にスコールが何度となくやってくるというパターンだったが、今年は朝からどんより、あるいは夜半から激しい雨という日が少なくなかった。  だが、ミャンマーに限らず、日本も異変続きだった。8月には台風が矢継ぎ早に来襲し、観測史上でも稀な20号まで発生する異常気象だった。こうした気象の激変ぶりを見ると、不安よりも何か地球環境の変化への不気味さの方が先に来る。

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輸入超、外貨投機などが原因か

 9月も間近になって、ようやく雨期の峠が過ぎ去った感がしてきた。しかし今年はやけに雨が多かった。例年ならお天道様が覗いている間にスコールが何度となくやってくるというパターンだったが、今年は朝からどんより、あるいは夜半から激しい雨という日が少なくなかった。
 だが、ミャンマーに限らず、日本も異変続きだった。8月には台風が矢継ぎ早に来襲し、観測史上でも稀な20号まで発生する異常気象だった。こうした気象の激変ぶりを見ると、不安よりも何か地球環境の変化への不気味さの方が先に来る。
 ところで異常といえばミャンマーチャットの暴落ぶりもとどまるところを知らない。8月24日にはついに1ドル1,500Ksを超えてしまった。かっては対ドル1,000Ks前後で推移していた。これはある程度予想されていたとはいえ、50%もチャット安になってしまったのは尋常ではない。
 これではチャットで商売をして、原材料を外貨で決済している事業者はたまったものではない。6月中旬にミャンマー中央銀行が介入に入ったが、10億Ks(約9千万円)程度のチャット買いでは焼け石に水である。
 根本原因はやはり輸出の伸び悩みで輸入超になっているからだろう。ドルを買い占め投機対象にしている一部の富裕層にも問題がある。ここは本当に官民一体となって通貨危機に対処していかないと投資家だって二の足を踏むし、この状況はますます深刻になっていくだろう。

日本は国力強化に 官民一丸となった

 思えば日本円も、当方が初めて海外へ出た昭和40年代には1ドル365円のレートだった。しかも今では考えられないが、観光旅行では上限500ドルという外貨の持ち出し制限があった。日本は高度経済成長期前で、外貨の管理には厳しい姿勢で臨んでいた。それから30数年余りで、対ドル100円、いや一時は80円前後にまでなったのだから驚きだった。これもあれも日本は技術力を高め、優秀な製品で輸出力を高めて外貨準備高を増やしていったことにほかならない。国民が一丸となって、当時の総理が「トランジスタラジオのセールスマン」と揶揄されようが、“日本株式会社”と軽蔑されようが、ともかく経済力と国力増強に邁進した。
 今、当方がこの国で毎度偉そうなことを書き連ねながらフリーペーパーなんかを発行していられるのも、我々の先達たちのこうした血のにじむような努力のお陰だと思っている。絶大なる円への信頼度とこれを裏打ちする強靭な経済力は、かっての企業戦士の方々が礎を築いたのだ。
 我々は当たり前のようにこの日本の信用力の恩恵を享受しているが、先の大戦で打ちしちがれて食料さえもままならなかった日本へ、当時のビルマが米を援助してくれた時代があったことも決して忘れてはいけない。だから現在の日本の繁栄と国力はまるで自分が築いたかのような尊大な態度でこの国に乗り込んでくる方々を目にすると、非常に腹が立つ。

外国人観光客への 悪しき慣習を断ち切る

 しかし、現在のミャンマーは危機感が非常に希薄のように感じる。これ以上チャット安が続けば、当然輸入品に頼る生活物価はさらに高騰し、インフレは加速する。そうなると庶民の生活はますます圧迫されていくだろう。
 米国は慢性的な赤字大国だが、それでも世界から資金が流入する巨大な金融市場がある。だから経済はびくともしない。その点、ミャンマーにも証券市場ができ、外国人の株式購入が認められたとはいえ、肝心の市場が脆弱で、到底米国のようなわけにはいかない。
 そこで当然外貨獲得の手立てをあれこれ考えなければならない。その近道ともいえる観光業は政府もその重要性を認識しており、様々な方策を講じているようだが、今一つ好転していかない。
 理由は明白だ。例えば隣国のバンコクに比べてもホテル代が高すぎる。また先般マンダレーに行って再認識さられたが、ヤンゴン~マンダレー間の片道航空運賃は外国人が85$、ミャンマー人が35$と、50$の料金差があったのには愕然とした。85$あればLCCでバンコクへの往復切符が買える。国際線より国内線料金が異常に高すぎるのだ。
 また観光地へは外国人は入域料という制度があり、有名寺院の見学には外国人は有料というシステムを敷いているところが多い。これも甚だ疑問で納得が行かない。
 観光立国としてはアジアでも有数の素材を持ち、タイにも決してひけを取らないのに、毎年そのタイに2千数百万人もの差をつけられているのは、タイが観光立国として本気で取り組んでいるからだろう。イスラム系難民問題で頼みだった西欧人観光客が激減し、10月から日韓中の観光客のビザなし入国処置を敷いたが、これとて観光客増加につながるのかどうか、当方ははなはだ懐疑的だ。
 欧州には外国人観光客への周遊割引鉄道パスがある。米国にも期間限定だが国内長距離バスの乗り放題パスがある。諸外国は観光客誘致に様々な優遇制度を設けているのだ。
 だからこの国も、根本的には前記したような外国人観光客とローカルとの差別を徹廃し、金のある外国人から搾り取ろうという意識を捨てるべきだろう。そうしないとミャンマーの観光業は永遠に伸び悩むような気がしてならない。
 むろんそうした観光地で古くから外国人相手に生業を立てるローカルの人々が沢山いることも承知している。入域料などで建築物の修復保全などを行っている例も多いと聞く。しかしどこかで一度そうした制度や慣例を断ち切っていかないと、毎年数百万人程度の外国人観光客の奪い合いで終始することになる。世界遺産クラスの観光地が数多くあるのに、これではせっかくの宝の素材の持ち腐れに終わってしまう。
 だから本気で外貨を備蓄し、チャット危機を回避していこうと思うなら、今こそ政府と国民が一体となって、悪しき制度改革に取り組むべきだろう。その手始めが観光業に対する意識改革のような気がしてならない。

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