導│ミャンマーに貢献する日本人 第3回 岡 拓哉 TakuyaOka

2015年12月に物流センターが完成し、翌年からKOSPAの本格的な低温保管事業(コールドチェーン物流)がスタートした。準備期間を入れれば今年で5年目に入るこの同社の事業は、紆余曲折ありながらも規模を拡大してきているが、やはりまだまだ気が抜けない日々が続いているという。

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     2015年12月に物流センターが完成し、翌年からKOSPAの本格的な低温保管事業(コールドチェーン物流)がスタートした。準備期間を入れれば今年で5年目に入るこの同社の事業は、紆余曲折ありながらも規模を拡大してきているが、やはりまだまだ気が抜けない日々が続いているという。
     「ミャンマーは以前に比べて情報伝達が迅速になってきています。中間所得層も増加してきています。そのため食品の安全性という問題に関しても、これまでよりだいぶ真剣に考える方が増えてきているように感じます。しかし、それでもまだ、安全よりも、コスト面を優先せざるをえない企業が少なくないのが現状です。これがこの国での高品質な食品物流網事業を拡大していく上での大きなハードルですね。」
    2013年の調査調査視察段階から会社の立ち上げ、物流センターの構築、そして運営管理の全般にわたって携わってきたKOSPAの日本人現地責任者である岡さんは、5年間の総括的な意味でこう述べた。
     「ミャンマーにおけるコールドチェーン物流事業は長い目で見ていかなければならないでしょう。しかしそうは言っても当社としては、規模の拡大を目指していかなければなりません。ですから一般物流や新たな事業モデル展開へも力を入れていく必要があります。」
     国内主要都市間幹線物流や農水産物物流、中国、タイなどとの国境物流の営業販路のさらなる拡大も重要課題である。そのためにも親会社の国分の東南アジアの拠点であるベトナムやマレーシアとの連携も視野に入れて活動をしているという。
     「国分のアセアン事業のキーワードに”食“があります。ベトナム、マレーシアには商物の事業拠点がありますが、現在ミャンマーを含めるとまだ”点“の段階にしかすぎません。だからこれを”線“のレベルにアップし、国分のバリューチェーンを”面”で展開していく事がミッションです。
     その意味でもミャンマーの物流事業は重要になっていくと思います。現在、KOSPAの陣容は全体で130人、うちドライバーが70人だという。スタート当初は岡さんが毎朝ドライバーの後を追い、勤務状況を細かくチェックしていたが、今はマネージャー制を導入し、営業マニュアルも充実してきたので、開業当初ほどの負担は減ったそうだが、それでもスタッフ管理には苦労するという。
     「失敗談はいくつもありますよ。結局、任せっきりはだめだということがわかりました。やってくれるだろうという丸投げの期待感は持つべきではない。私は全体を俯瞰する立場ですが、広く浅くではなく、大変ですが、”広く深く“にしないといけないと思っています。」スタッフたちとのコミニュケーションも大事だという。
     「自分の中に壁を作ってはいけない。指示するときも曖昧な言い方はだめです。生産性を上げていく為には、責任の所在と範囲、期限を明白にし、いつまでに誰が何をどうしなさいと、明確に細かく指示を出すべきだと感じました。そこで常日頃からのスタッフたちとのコミニュケーションが重要になってくるのです。」
     ミャンマーの若い人々は怒られるという経験があまりない。プライドも高い。だからそうした面を配慮しながら指導していかなければならないという難しさはある。
     「正直で人がいい国民性です。目上の人を敬う気持ちも人一倍強い。日本人にも相国に来た当初から変わっていません。でも間違ったことははっきり指摘しないといけないと思うようになりました。時には本気で叱ないとだめですね。それが長い目で見たら彼らのためにもなるのです。」

     このシリーズ連載も今回で最終回になるが、岡さんのミャンマーを思う気持ち、そして何とかこの国のために役に立ちたいという思いは変わっていない。
     「ミャンマーはまだ色々な問題を抱えていますが、急激に変わることはあり得ないと思います。国民もそれを望んではいないように思えます。これからも少しづつ独自の文化に馴染む形で改革、変貌していくのでしょう。物流は国の経済の根幹をなす事業だけに、私どもがそうした変革の流れに少しでも寄与できればと考えています。」
     岡さんは基本的にはミャンマーを思う気持ちは来緬当初から少しも変ってはいないという。しかしライバル企業も増え、ますます激化するこの国での物流事業を戦い抜き、しかも国民の「食の安全性」という意識が完全に定着していくまで、これからも岡さんの奮闘の日々は続いていく。

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