第15回「アジアビジネス通信」スリランカの挑戦者たち〜コロンボのサムライ起業家3人に聞く〜 ③渡辺泰眞 ExSendib WorKs 代表取締役

 インド亜大陸の南東、インドからポーク海峡を隔てた場所に位置する、島国・スリランカ。その正式名をスリランカ民主社会主義共和国という。ご存知、セイロンティーの故郷として知られているこの国だが、お隣のインドや東南アジア諸国に比べて、あまり日本に馴染みのない国であることは事実。ヒンドゥーを信仰するインドと異なり、熱心な仏教国であることも知られていないし、首都はスリジャヤワルダナプラコッテという長い名前を持つ。この都市名をすんなり言える人は、よほどスリランカに詳しい人かクイズや地理に関するウンチクが好きな人に違いない。ともかく、日本人在住者が1000人に満たないこの国に魅せられ、根を下ろし、さらには会社を創業した日本人がいるという。彼らはなぜこの国を選んだのか?どんな点にビジネスチャンスを見出したのか? 日本人開拓者たちを、同国最大の都市・コロンボで取材した。

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渡辺泰眞 ExSendib WorKs 代表取締役

1980年神奈川県生まれ。2010 年に JICAの派遣でスリランカに赴任し、同国の野球ナショナルチーム代表監督として活躍。帰国後、慶應義塾大学大学院で健康マネジメント学修士号を取得。2016年アーユルヴェーダ施設「ExSerendib Ayurveda Cure&Therapy」を開業。

台湾地区と似ている スリランカの立ち位置

 私が初めてスリランカを訪れたのは2010年にJICAの青年海外協力隊員としてでした。中国などいくつかの国が候補にありましたが、子ども達に野球を教えるという仕事の内容に惹かれてスリランカを選びました。滞在中はナショナルチームの代表監督として国際大会で指揮を執りながら、競技普及のために国内各所で巡回指導を行いました。その後約3年の任期を終えて日本へ帰国。今度は大学院で健康マネジメント学を学んだのですが、研究の内容がスリランカと関係していて、またスリランカと繋がることになったんです。そして大学院卒業後は再びスリランカへ戻り、一念発起して起業をしようと考えました。ただ、その頃は何のビジネスをするか具体的なプランはありませんでした。
 起業の際の私のアドバンテージといえば、5年間の滞在を通して現地語であるシンハラ語を習得していたことと、現地の人とのコネクションが既にあったということかと思います。元々はビジネスをするという目的で入ってきていないので、現地での振る舞いを学ぶ時間もあったし、トラブルに対する免疫が備わっていたというのも強みでした。
 そのため、昨年アーユルヴェーダ施設「ExSerendib Ayurveda Cure&Therapy」を開業した際は、語学を駆使して初期投資をかなり抑えることができました。店舗選びに関しても、実は現地でアーユルヴェーダのお店というのは性風俗と同等に捉えられて大家が物件を貸したがらないのですが、これも人の紹介で良い立地の物件を借りることができたのです。また、開業前にコンセプトを明確にして競合調査などを行うことで、オープンから2~3カ月で経営黒字を達成するに至りました。

店舗経営はスポーツ支援 実現のための第一歩

私が、なぜ本格的なアーユルヴェーダの施設を開業したかと言えば、スリランカの多くのアーユルヴェーダを謳う店は、ただのマッサージ店であると思ったからです。本来スリランカのアーユルヴェーダにはドーシャなど独自の体質理論があるのですが、このエッセンスを全く伝えられていないと感じていました。また、観光客の求めるサービスレベルに達しているかどうかということにも疑問を抱えていました。そこで、スリランカの伝統的なアーユルヴェーダのサービスを提供する店を日本式のマネージメントで運営すればうまくいくと考えたのです。サービスの内容は医師の診察を含んだ本物のメソッドに準じ、価格もあえて高級路線に設定しました。その結果、現在の顧客は9割が外国人でうち半分が日本人、1割がスリランカ人となっています。顧客のプライバシーとリラックスした時間を重視して、満足度の高いサービス提供を目指しています。
 当然、今の私にとって店舗経営を成功させることは1つの目標ですが、将来的に本当に自分がやりたいことというのは海外でのスポーツ支援なんです。ですからアーユルヴェーダは事業の1つであり、ビジネス
も夢を叶えるための手段であると考えています。
 100%ビジネスだけを目的にこの国に来たら、疲れてしまうと思いますよ。スポーツ支援に関しては、野球場の建設を自ら発起し、外務省と民間企業からの資金援助を受けて2012年に南アジア初の野球専用球場をスリランカに建設することができました。この成功体験は自分にとって大きな励みとなりました。今後も現地でのビジネスに取り組みながら、スリランカのスポーツ事業発展のために貢献していきたいですね。

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