今月の視点「半端ない」ミャンマー人を育てるために心を鬼にして指導を

雨期の真っ只中である。例年なら、日中の晴れ間に激しいスコールが何回かやってくるというパターンだったが、今年は、特に6月後半はベンガル湾から西部のエャワディー地方に居座っていた低気圧の影響で、終日雨か曇天の日が続いていた。  しかし、我々日本人に比べて、この国の人々はもう雨には慣れっ子になっているように見える。猛烈な雨足を見て顔を曇らせる日本人に比べて、大雨でも大半のミャンマー人は平然としている。

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大雨でも全く動じないミャンマー人 雨に対する意識が日本人とは異なる

 雨期の真っ只中である。例年なら、日中の晴れ間に激しいスコールが何回かやってくるというパターンだったが、今年は、特に6月後半はベンガル湾から西部のエャワディー地方に居座っていた低気圧の影響で、終日雨か曇天の日が続いていた。
 しかし、我々日本人に比べて、この国の人々はもう雨には慣れっ子になっているように見える。猛烈な雨足を見て顔を曇らせる日本人に比べて、大雨でも大半のミャンマー人は平然としている。
 「朝、降りしきる雨を眺めながらコーヒーを飲むのが日課で趣味」という、雨をポジティブにとらえ、かつ詩的なことをのたまうミャンマーの友人もいるほどだ。
 日本もこの時期「梅雨入り」だが、「うっとおしい」という言葉が存在するように、我々はどうもこの「じめじめ感」が苦手だ。こうして考えると、雨一つとってみても、日緬ではこれだけの感覚的な意識の差があることがわかる。

子供を余り叱らないミャンマーの親 最近の日本でも消滅したスパルタ教育

 こうした日常生活上の違いは、様々な面で感じられる。たとえば親の子供に対する躾である。ミャンマーの家庭では、子供を激しく叱咤することはないという。無用のトラブルを嫌い、家庭内では家族の絆をしっかり保ち、いつも平穏無事に暮らしたいと願う人々がほとんどだからだ。だから余程のことがない限り、親は本気で子供を怒らないという。この国ではこの意識が延々と継続されている。
 日本でも最近の親は、あまり子供を叱らなくなったといわれている。子どもの躾は厳しさよりも、長所を伸ばすように褒めて育てたほうがいい、という風潮も強くなってきた。
 これには、かつての日本の躾の主流だった「スパルタ式教育」や「体罰」への反発がある。しかも欧米では体罰や押しつけ教育は非主流になっており、個人の自由を尊重しているという観念が広まってきたためでもある。
 しかし、この風潮に敢然と異論を唱える学者がいる。心理学博士の榎本博明氏(MP人間科学研究所代表)である。氏は最近刊行した『ほめると子どもはダメになる』(新潮新書刊)の中で、「ほめて伸ばす」という教育方法の弊害を具体的に指摘している。
 欧米の親は、日本よりもはるかに厳しく、子どもに対して威厳がある存在だという説である。氏の主張と論法は子育てに限らず、社員教育についても、「ほめて伸ばす」式の育成方法が功を奏すると考えている人々に、一石を投じている。

欧米の親は子供の躾に厳しい態度で 米国では多少の体罰に肯定的な意見も

 氏の著書の中で特に興味を引くのは、日本の親(特に母親)は、子どもと友人のような関係を持ちたがる傾向が強いという点だ。そのため、親の意見を押し付けたがらない。これは世界的に見てもかなり珍しい傾向だという。
 「子どもの体験活動等に関する国際比較調査」(子どもの体験活動研究会)が2000年に日、韓、米、英、独の小学5年生と中学2年生を対象に行った調査結果によると、躾に関する言葉がけとして「ちゃんと挨拶をしなさい」「嘘をつかないようにしなさい」といったことを父母から「言われない」という子どもの比率は日本が圧倒的に高かったという。具体的な数字では「ちゃんと挨拶をしなさい」に対し、父親からから「言われない」の回答が日(72%)韓(46%)米(27%)英(38%)独(66%)で、母親からは同、54%、39%、23%、29%、60%となるそうだ。
 同様に「嘘をつかないようにしなさい」は、父から「言われない」が71%、27%、22%、22%、42%、母からが60%、22%、21%、18%、38%になるという。もちろんこうした言葉がけがで子どもがそのように育つかどうかは別問題だが、それにしても意外な数字だ。
 近年日本では体罰について過敏な反応が目立つ。体罰に類する行為をする教師は野蛮人のように扱われがちだ。しかし、米国ではつい最近行われた調査で、体罰に関して肯定的な意見のほうが多かったというから驚きだ。
 シカゴ大学が2014年に実施した「子どもの躾に対する意識調査」によれば、体罰に賛成という者が、18~29歳で74%、30~39歳で73%、40~49歳で70%、50代以上でも60%以上となっているという。深刻なダメージを与えるような体罰は論外にしても、明白に子どもが悪くても、正座させただけで大騒ぎになる日本とは意識が違う。
 同書で氏は、他にも具体的なデータや事例を引いて「欧米の親が優しいというのは誤解に過ぎない」と断じている。何でもかんでも「ほめて育てる」といった風潮に違和感のある方には興味を引く1冊で、逆に「子どもは叱ったら萎縮する」と信じている人には刺激的な1冊となるはず。
 今、ミャンマーの課題は教育と人材育成にあると言われている。今月号の「導」(P17)のKOSPAの岡さんも述懐しているように、日系の進出企業が最初に突き当たる壁は人材雇用だという。しかもその後の育成、指導方法も難しい。日本式を持ち込むと簡単に辞めてしまう若者が少なくないからだ。
 しかし、本当にこの国が発展し、繁栄していくためには、教育に対しての厳しさは不可欠で、避けて通れない道だと思う。かっての日本はその方式で世界一の経済大国になった。そして、スポーツの世界でも「半端ない」といわれる数々の名選手を輩出してきた。
 だから「叱咤激励」をすることを恐れてはいけない。ミャンマーの将来を本当に思うならば、心を鬼にして時には本気で怒り、指導すべき時期に来ているのではないか。

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