◎今月の視点 道路と車の改良だけでは抜本的な解決にはならぬ 環状線の再利用こそ交通状況を緩和させる最短手段に

8月も終盤にきて、荒々しかった雨期の天候からやや角が取れた感がある。朝方から乾期のような青空が顔をのぞかせる日が増した。

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日本の大手ホテルが進出を決める ヤンゴンに高級ホテル開業ラッシュ

8月も終盤にきて、荒々しかった雨期の天候からやや角が取れた感がある。朝方から乾期のような青空が顔をのぞかせる日が増した。もう雨期のピークは過ぎ去ったのではと直感的に思う。
 ところでピークといえばヤンゴン市内の建設ラッシュは相変わらずである。ダウンタウンのサクラタワー斜め前の旧鉄道省跡地の再開発、サンチャン地区で完成間近となったこの国最大の複合商業施設「タイムズシティ―」をはじめ、市内には大小様々のプロジェクトが進行中だ。
 その多くはコンドミニアムかサービスアパートあるいはホテル建設である。先般そうしたプロジェクトに京王電鉄グループやホテル・オークラといった日本の有名ホテルが開業や運営という形で参入するというニュースも流れた。
 すでにオープンしたインヤ湖畔の「ロッテホテル」、年内開業予定のジャンクションシティ―の「パン・パシフィック」や鉄道省跡地に予定される香港の「ペニンシュラ」など、ヤンゴンはこれから高級ホテルの開業ラッシュが続きそうだ。
 しかし老婆心ながら、そんなに高級ホテルができて大丈夫なのかと思う。観光客の落ち込みでホテルの稼働率を危惧しているからだ。

BKやKL は宿泊の選択肢が多彩 ヤンゴンの問題点は市内における足

「イレブンニュース」によれば、現在ミャンマー国内のホテル数は1019軒で、客室数は3万8,722室にまで増加している。むろん大半がヤンゴンで、そのあとにマンダレーが続く。
 お隣のバンコクのホテルの客室数は8万7,600室(2014年、タイ統計局調査)で、マレーシアは16万1,117室だそうだ。しかしクアラルンプール(KL)に限れば236軒、約3万室しかないという(マレーシア観光省)。
 米不動産大手ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)の推測によれば、バンコクは2019年末までにさらに7,400も客室が増加すると予測している。タイ政府による観光振興策などが功を奏して旅行者数を押し上げ、昨年の稼働率は実に約75%の高水準だったことが背景にあるという(現地紙バンコク・ポストなどから)。
 KLの場合でもホテル稼働率は66.9%と前年を4.2%も上回った。両国とも、ゲストハウスの数が多く、特にマレーシアはホームステイという宿泊形態があるので、通常のホテルがヤンゴンより少ないにも関わらず、外国人観光客の選択肢が多彩だという。
 ちなみに、世界最大のオンラインホテル予約サイト「エクスペディア」の日本語版サイトが行った5つ星ホテルの宿泊費を比較した「コスパランキング」では、このKLが1泊1万3,988円というダントツの安さを示す結果が出た。
 2位はバンコクの1万6,352円で、3位はベトナム・ハノイの2万11円。これは東京の3つ星ホテルと同等の料金で、1室の料金だから2人で宿泊すれば、5つ星が7千円~1万円という信じがたい料金になる。ネット予約料金比較だから多少の割引は必要だが、ホテルの稼働率の高さは、どうやら宿泊料金とは無関係ではなさそうだ。これでヤンゴンの高級ホテルは太刀打ちできるのだろうか。

最優先課題はやはりインフラ整備に 交通インフラの解決は環状線から

ミャンマーの観光業の再興の必要性も理解できないことはない。だが、この建設ラッシュには少々違和感を感じる。その前にすべきことは山ほどあるのではないか。医療、教育問題、地方と都市部の格差の是正なども重要だが、何よりも優先されるべきは電力問題とヤンゴンの交通状況の整備だろう。
 外国人訪問者の観点に立てば、いくら空港をリニューアルしても、その先の市内への足がタクシーかチャーター車しか選択肢がないのは困りものだ。観光客数1,2位を占めるバンコク、KL には市内への「エアポートLink」という便利な交通機関がある。しかも市内には地下鉄や高架モノレールが走っており、慣れれば外国人にとっては実にありがたい効率的で安価な交通手段となっている。
 ヤンゴンに今すぐ地下鉄やモノレールを作れといっても土台無理な話だが、この街には山手線の遥か以前に作られた環状線があるではないか。今、JICA の方々が懸命に改修作業を行っており、線路、信号機などの改良を行い、最終的には現状の30㌔から60㌔走行を実現させ、一周を1時間短縮した1時間50分運行を目標に
しているという。
 この既存路線を利用する手は浮かばないのか。例えばヤンゴン国際空港へ一番近いミンガラドン駅から空港まで支線を引くことができれば、そしてダウンタウンの中央駅まで60㌔走行が可能になれば、30㌔にも満たないこの距離なら、ノンストップで30分を切る計算が立つ。
 もちろん現在のように線路内に自由に立ち入る事を禁止したり、安全面の十分な方策も必要になってくるが、東京の京浜急行が蒲田駅から羽田空港まで支線延長したようなことはできないのだろうか。大変荒っぽい考えであることは承知の上だが、たかが2,3㌔の支線延長である。日本の技術を持ってすれば決して不可能ではないはずだ。
 これなら1時間に1本でもいい。朝夕の渋滞に関係なく、所要時間が読めるし、その次に順番にインヤ湖に近い中心駅を途中停車駅にしていけば、利便性は徐々に広がる。
 将来的にはミンガラドン地区からダウンタウンへ通うローカルの通勤客を視野に入れ、本数を増やしていく。また、北西部のシェピーターやラインターヤといった工業地帯でも、近隣駅からの支援延長で同様のことを計画できないのか。しかし残念ながらこのアイディアは机上の空論などといって一笑に付される恐れは十分にある。
 問題の核心は、多くのインフラがまだ未整備の状態で、うわべだけを着飾っても意味がないということだ。中身が伴わなければ、いずれ底が割れてしまいかねない。
 こうした観光業の再興や都市開発とインフラ整備とは決して無縁ではない。官民が長期的な展望に立って協力推進していかなければ必ずどこかで歯車がかみ合わなくなる。
 圧倒されるほどの豊かな緑に恵まれたヤンゴンの街の景観は本当に癒される。しかし整備不良の車も依然多く、排気ガスの増大も他人事ではなくなる。
 中国から輸入された新型バスも走り始めたが、道路と車の改良ばかりに固執していたのでは、交通渋滞の抜本的な解決にはならないし、将来の環境への影響も懸念される。
 焦る事はないが、10年20年の長いスパンでぜひ都市計画を構築していただきたい。

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