◎顔・人│VIP インタビュー ミャンマー最大の女性支援団体会長の果てしなき夢 ノウハウ、資金提供で農村女性に経済的自立の道を Daw Hla Waddy ラ・ワディさん

Myanmar Women Entrepreneur`s Association ( MWEA) President ミャンマー女性起業家協会 会長 New Step Services Co. Ltd. 会長 Depa Waddy Construction Co. Ltd. 会長 Square Power Group Co. Ltd. 社長 アウンサン・スーチーさんは国民から「お母さん」と呼ばれているが、この会長もビジネスを志す女性、恵まれない環境にある女性たちに積極的で緻密な支援の手をさし延べ、今や「ミャンマーのゴッドマザー」ともいえる存在感を持つ。その活動ぶりを聞いて、この国の未来への期待感が湧いてきた。

目次

法人100社を含む2000名の会員組織 意欲に燃える若い女性の起業家を育成支援

 ミャンマーには6つの女性団体があるが、今回お招きしたワディさんが会長を務める「ミャンマー女性起業家協会」(MWEA)は、この国最大の女性支援団体である。
 創立は1995年というからすでに22年の歴史を持ち、現在、組織は国内8州、7管区に広がり、会員数も2000名を超えた。しかも法人会員数もゆうに100社を超す文字通りのミャンマー最強の女性支援団体である。むろん非政府、非営利、非宗教団体であり、ミャンマー商工業連合会(UMFCCI)や国際女性財界連盟(IFWE)のメンバーであり、世界の30団体以上の女性起業家協会とも交流をもっている。
 ワディ会長はご自身建設会社を核に複数の企業のトップに君臨しているが、この協会の創設時からのメンバーの一人でもあり、3年前の2014年にはその手腕を買われて会長に就任した。
 「ミャンマーは人口的にも女性の方が多く、大学でも女子学生が圧等的な割合を占めています。しかもこの国には賢い女性が一杯います。それでもそうした能力のある女性たちの就職や仕事に関しては依然ハードルが高い。それでは国の損失です。私たちの目的は優秀な女性たちに能力に応じた仕事やビジネスの機会を作ってあげることなのです」。冒頭から会長はこう熱弁をふるった。
 ミャンマーが民主化になり、政権が代わり、少しずつ規制が緩和されてくると、若い女性たちの間でもビジネスにおける起業志向が芽生え始めた。
 「会員の多くはすでに事業を行っている経営者や幹部ですが、今、私たちは新しい会員の若い女性のなかで事業意欲に燃えている方々を支援し、育てていくビジネストレーニングに力を入れています。必要とあらばタイ、マレーシア、インドへ送り出してスキルアップを計っています。日本へもすでに4人も送っています。皆優秀でMBA を取得しているんですよ」。
 会長は本業の実務の傍ら、毎週ビジネスマネジメントのセミナーを開き、月に1度は全体ミーティングを開いて起業家の育成や活動方針などを討議しているという。
 協会では、ミャンマーの女性起業家が国の発展に果たす役割を高めるために、必要な資金、知識、技能、管理能力、技術を提供することで効率的な支援を行っている。

資金から販売先まで指導するファイナス 利息の一部を村に寄贈して公共事業に

こうした女性起業家の育成支援もこの協会の大きな目的だが、もう一つの支援事業は農村部の女性たちの自立支援である。ミャンマーは国民の約70%が農業従事者で、特に地方の産業はどうしても農業が主体になってしまう。そして近年では都市と農村部の経済格差が広がり、農業従事者たちの生活は苦しくなる一方で、なかなか向上していかない。
 「そこで私たち協会は数年前からこうした人々を対象にしたマイクロファイナンス事業を立ち上げました。しかしただ単に資金を融資するだけでは不十分で、規模は小さくてもいいですから独立した事業を興すように指導しています。たとえばお花です。ミャンマーでは花の重要はありますから、農村の女性たちをグループ化し、花の栽培を事業化させています。もちろん、資金を提供し、経営、管理などのマネジメントを教え、さらに販売先や資金回収の目途までつけて事業が軌道に乗るように指導しています」。
 ここ数年、この国ではマイクロファイナンスの会社の進出は目覚ましいが、ここまできめ細かく面倒を見てくれるシステムはまだない。非営利の団体だからこそできることなのかもしれない。こうした実積と活動状況を見て、最近では政府、中でもアウンサン・スーチー氏からも激励や感謝の声が届くようになっているという。
 「基本的には1人に対して最初は50万Ksの融資が上限です。利率は3%。月ではなく、例えば栽培から出荷まで半年かかるとしたらその間の利息となります。その利息は返済されたら1%はその地域の村に落ちる仕組みなっています。そして道路や病院、学校などの建設資金として蓄えられます。協会は返済金で新たな融資を行なえます。回収率は100$%ですから、好循環で支援の輪が広がります」。
 現在、協会の運営予算は会員1人の年会費11万Ksが基本になっているが、協会とワディ会長の建設会社が入居する8階建てのビル(ヨーミンジ)は協会所有で、下階の商業テナントやオフィスの賃貸料もすべてこうした資金に回せるようになってきたそうだ。そしてついに政府からもサポートが来るようになったという。
 「あとは事業をいかに効率化させてあげられるかでしょう。ミャンマーベリーという日本の会社が技術支援をしてくれていますが、月々の収穫量が7トンだったものが倍以上の15トンにもなったケースがあります。そうなれば収益も上がるし、農村部の生活向上にもなりますね。融資、指導対象は女性ですが、その後ろには旦那や家族たちがいる。つまり母親を中心にそのファミリーが協力して事業を行っているのです」。
 ここまで熱心に誠意をもって女性支援に打ち込むワディ会長は、ご自身も若い頃に似たような経験と苦労を重ねたから心情的によくわかるのだという。
 大学を出てから彼女はバゴーの市役所に経理として11年間勤務した。時代的に大卒は少なく、ましてや数学の学士をとったワディさんは、その仕事に満足感を感じたことはなく、36歳の時に退職して小さな建設会社を興した。相当な決断だったという。女性の仕事への門戸は狭く、自分で起業するしか方法はなかったのだという。
 「公務員の時に小さな土地を買っていました。そこにアパートを立てて売る事を手始めに考えたのです。しかし建築資金が乏しく、友人たちに借金したり、建築資金を一時的に借りたりして何とかスタートさえましたが、やはり資金が続かなくなり、仕方なく工事半ばで売却したのです」。しかし運命の女神は微笑んだ。今でいう完成前分譲で、新築アパートは希少だったので、工事代金を清算してもかなりの利益が出たという。
 しかし起業したときのこうした苦労をいつまでも忘れないワディ会長の脳裏には、同じような経験をしている女性たちに手を差し伸べたいとの思いで、支援を始めたのだという。
 それから10数年、様々な辛酸をなめ、女性経営者ゆえの苦労を重ね、ついに従業員数200名を超す中堅の建設会社に成長させた。そしてゼネコン、不動産など多岐にわたる事業を手掛け、ミャンマーでは有数のパイル(基礎杭うち)会社も軌道に乗せた。

手抜きや粗悪な仕事を避け信用を拡大 苦境にあえぐ全ミャンマー女性の救済

そのPile Foundation Service会社「De Pa WaddyCoLtd」を独立させて引き継いだ娘のWineさんは「母はまさにゴッドマザーで、凄い人です。以前は母の会社で建築材料などの販売をしていましたが、独立させてくれました。ゼロから興した会社ではありませんが、自立させてくれたのです。責任は重大ですが、会社を大きくしてみせます。そしてサクセスウーマンになってみせます」。
 娘のWineさんも母に負けず劣らず自信たっぷりに語った。そして妥協を許さない母ワディさんの経営姿勢についても
 「私たちの会社は20数年も前から国や市(YCDC)の規制やルールを守り、手抜きや粗悪な仕事をすることだけは絶対にしませんでした。それで信用を得て、ここまで大きくなったわけですが、でも建設業大変です。資金がいるし、技術やいい人材も必要です。これまで日本の会社と提携し、良質の建築材料を入れることを模索してきましたが、いいとわかっていてもそれ相応の資金がいりますから簡単にはいきませんでした」。
 しかし、基礎を強固にするパイル会社は順調に推移しており、今ではマンダレーやタウンジーにも販路を広げているそうだ。
 「私も女性起業家協会のメンバーですが、この協会にはミャンマーの蒼々たる女性経営者の方々がメンバーや幹部になっています。皆さんご自分たちのことばかり考えずに、若い女性起業家のサポートに協力してくれています。母がその先頭に立って活動していますので、会社の方は私たち兄妹が取り仕切るようになってきましたね」。
 ワディ会長の夢は、この女性支援団体の更なる国際化である。海外の技術や知識やノウハウ、そして支援を受けて、苦境にあえぐ全ミャンマー女性の救済にあるという。
 そのためにも日本の女性支援団体とも交流を深めていきたいそうだ。関心のある団体は、当編集部までご連絡いただければ、ワディ会長と協会におつなぎする。

<Daw Hla Waddy 略歴>
本名    Hla Waddy
年齢   68歳
出身地    エヤワディー生まれ  仏教徒
学歴    ヤンゴン大学 数学科卒
職歴    1985年 Depa Waddy Construction Co. Ltd.を創業。現会長
社会活動  Myanmar Women Entrepreneur`s Association
  1995年 第二秘書  1 998年 第一秘書
      2006年 副会長  2014年 会長
Working Group promotion of Socio Economic Status of Women 会員
Myanmar women`s AffairsFederation 会員
      UMFCCI(ミャンマー商工業連合会)
EC Member

Tags
Show More