◎Bagan 通信 第13回 ―――― バガン遺跡は誰のもの?

バガンはご存じのように世界遺産ではありません。

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    バガンはご存じのように世界遺産ではありません。
     かつて軍政時代につくったビューイングタワーやゴルフ場が景観を損ねていること、そして1975年の大地震で倒壊したパゴダ、特に尖塔部分をセメントなどの現代的な建材によって補修した、というのが主な理由だと言われています。
     世界三大仏教遺跡のひとつにも数えられるバガンが世界遺産でないというのも不思議であり、ユネスコは何としても登録を果たしたいと自ら申請手続の支援を申し出るほどの熱の入れようで、現地バガンでも関係者にセミナーを開くなど登録を急かしているようにも見えます。
     ただ、それではバガンの人は、さらにはミャンマーの人はバガン遺跡に世界遺産になってほしいかというと、ほとんど興味はないでしょう。少なくとも自分たちの宝であり、自分たちの信仰の発祥の地であるという認識はあっても、世界に広めたい、それも遺産として保護してもらいたいという気持ちはまったくないでしょう。
     ここがポイントです。バガンは遺産ではないのです。アノーヤターの時代から、王朝がシャン族に移っても、マンダレーに移っても、時の王らが補修し、田舎の農村に落ちぶれたバガンの寺院や仏塔を守ってきました。アンコールワットやボロブドゥールのように、ジャングルの中から突然出てきた「忘れられた過去の遺物」ではないのです。

    観光コースになっていない無名のパゴダを探しに奥の方に行ったときのこと、日本人の情緒感をくすぐる草に埋もれたパゴダがありました。と、そこにお坊さんと村の人たちが花を持って現れました。私はびっくりしました。こんな朽ち果てたパゴダにもお参りに来るのかと。
     ヤンゴンの税務署の担当官からこう言われたことがあります。「あんたバガンで事業やってるじゃない。あそこはね、私たちミャンマー人のこころのふる里なのよ。あんまりホテルとかできないで欲しいよね・・・」
     地元バガンの人はというと、世界遺産の「せ」の字も知りません。地元の人に恩恵のない勲章など果たして必要なのでしょうか?
     しかも世界遺産でなくとも観光客は増加しているのです。私はバガンに居住する外国人として、バガンの人々が嫌がることだけはしてはいけないと思っています。そしてバガンだけは、外国人主導の商業主義だけでもって観光開発を促進してはいけない場所だと思っています。
     観光発展と遺跡保護は本来逆を向くものです。そういえば、かなり前京都ホテルが景観を損ねると、お寺さんたちがホテルの宿泊客の拝観を断るというニュースがありました。日本の観光開発は決してお手本になるものばかりではありません。またアンコールワットでは世界遺産に登録されていないベンメリア遺跡がいちばん人気となっている事実も遺産保護のあり方、難しさを如実に示しています。
     観光業者のひとりとして、過去の過度な観光地化による反省を踏まえ、真の意味での遺跡・文化財保護、そして野生動物の保護も忘れてはいけないと思うのです。

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