◎今月の視点 楽して効率は上がらぬ。「改善」とは「効率上げて楽になる」こと。

ヤンゴンの雨季は継続中だ。日本でも6、7月は梅雨、台風で雨が多く、それが止むと猛暑となった。

目次

新設図書館のオープンに招かれて この国初の会計、税務の専門大学

ヤンゴンの雨季は継続中だ。日本でも6、7月は梅雨、台風で雨が多く、それが止むと猛暑となった。不謹慎かもしれないが「熱中症」などという懐かしい響きが伝わってくる。この国では酷暑になっても、この症状はあまり聞かない。しかし、朝晩20度以下になる12月あたりに体調を崩す方が続出するから、暑さには減法強いが、寒さには極めて弱い。
ところで先月、2年前に大学に昇格した「Yangon Co-Operative UniversityThanlyin」(ヤンゴン協同組合大学)に新設された図書館のオープンセレモニー
(P19交参照)に招かれた。
この大学はミャンマーで初めて会計、税務の専門家を養成する教育機関で、日本での研修キャリアを持つ先生が10人もいる。大学の関係者が弊紙ミャンマー語版の読者であり、取材と新聞常設の依頼を受けての出席であった。
この国の重要なキャリアを養成する新しい大学にしてはこれまで図書館がなかったので、学生たちは不便を強いられていた。その現状を見かねて手を差し伸べたのが、Taw Win Centerなどの高級商業施設やホテルなどを所有する財閥グループ総帥のU KoKo氏だった。

関係者から飛び出した「Kaizen」  日本ではトヨタ生産方式が有名

図書館はPCを30台も常設し、欧米の会計、税務、金融からマーケティングの専門書を取り揃えた冷房付きの立派な施設だった。今秋にヤンゴン証券取引所が予定され、金融インフラの整備が急務なだけに期待される大学だった。セレモニーが終わり、大学関係者としばし歓談したが、関係者から再三口をついて出た言葉が「Kaizen」で、これにはある種の驚きを憶え、妙な懐かしさを感じた。ミャンマーの方々は、意外にこの「Kaizen」という日本語をご存知の方が多い。
日本でいう「改善」とは、生産設備の改造や工具の改良など、業務効率の向上や安全性の確保、品質不具合防止など生産全般にわたっており、日本の製造業ではすでに多くの企業が取り入れている。
元をただせばトヨタ生産方式が有名で、「改善」は基本概念の一つになっている。しかし、トヨタのそれは会社の効率化が究極目的になってはいない。ムダの削減である。極力なくす試みである。製造の「手待ち・加工・運搬・在庫・動作・作りすぎ・不良や手直し」という7つの工程の中でムダを検証し、改善していくことだという。つまり日本の「改善」とは、ムダを省いて効率を上げることにより、作業従事者一人ひとりを楽にするという考え方なのである。

末端まで伝わらない「Kaizen」の意識 いつかは「Made in Myanmar」製品を

今、この国の経営トップの方々は「Kaizen」の意味
や意義は十分承知しているものの、その意識が末端まで浸透していないという問題を抱える。つまり、ムダとわかっていながらそれを放置し、たとえ「Kaizen」がなされていたとしても、中途半端な形でお茶を濁している。厳しい言い方だが、まだこの国の作業現場では、ミスやムダが多い。そして「楽をして効率を下 げる」結果にはなってはいまいか。
弊紙の例を出して恐縮だが、現在日本語、ミャンマー語版を刊行しているが、これまで仕方なく印刷屋さんを3度も変えた。この国で5指に入る印刷工場という触れ込みでも、品質への意識は低い。むろん印刷機械が20年前くらいのもので、ある程度の観念はしているが、我慢できぬのは製本である。これはどこでも人海戦術で手作業である。中古でも高価な日本製の製本機はやはりなかなか手が出せず、安い人件費でまかなえるからだろう。しかし人間だから完璧とはいかず、ときどき乱丁、落丁の紙面が混入する。そのたびにクレームはつけるが、「Kaizen」された様子はない。
余りにもひどいので、ある時製本現場を見に行ったら、20m四方の倉庫の中で、若い女性たち10人程が、横一列に座って刷り上がった新聞をページ順に折り込んでいた。これでは長時間続けていたら必ずミスが出る。2枚重なった新聞を気付かずに折り込んだりして間違いが起こる。これを防ぐには、最後に完成した新聞のページ数をチェックする係りを置けば済むことだが、それをしない。
さらに、毎回のことだが、なぜそうなったのかの原因究明もない。そして責任の所在も明らかにされず、ついにトップへ持ち込んでも他人事のような対応である。このことは印刷業に限らず、他業種でも似たような状況だろう。どうも本気で
「Kaizen」していこうという気概が見えてこない。
日本の昔の商人たちは、たとえ演技でも土下座して床に頭を擦り付ける気迫で謝罪した。ビジネスとはそういうものだ。でないと「Kaizen」など永久にできないし、質の向上などおぼつかない。私たちは、いつか「Made In Myanmar」と胸を張れる製品を作っていただけると、信じて待つ。

Tags
Show More