◎介護 外国人技能実習制度の「介護実習生」がついに解禁へ 「期待が高まるミャンマー人は日本の介護福祉の救世主となるか」 深刻な人手不足に直面する介護福祉への就労と今後と問題点

 外国人が働きながら技術を学ぶ技能実習生制度の「介護」の受け入れが、先月1日から可能になった。昨年11月に 「外国人技能実習生の保護に関する法律」が国会で可決成立し、1年後の施行となった。そこで注目を浴びるてきているのが心優しきミャンマー人である。果たして彼らが日本の深刻な人手不足の将来の担い手になるのか。多くの問題をはらむこの制度と介護事業の実情を踏まえて検証してみた。

目次

「介護」就労外国人に3つの門戸が

雨期の真っ只中の6月、私は弊紙事務所近くで足を滑らせ転倒し、腰と腕を強打した。翌日から4,5日は横になると血液循環が鈍り、起き上がるのにも腰に激痛が走るようになった。そして痛みの峠を越すのに半月間くらい要したが、最初の4,5日は本当に辛かった。
 団塊の世代の私は、自分では4,50代のつもりでいたが、床に伏せてしまうとやはり年齢をを意識せずにいられず、心細くなった。しかし幸いなことに心優しき弊紙スタッフが毎日のようにやってきて、あれこれと面倒を見てくれた。掃除、洗濯、果ては食料の買い出しまで、階段を下りるのにも苦痛だった私のケアをしてくれたおかげで、現在では痛みもほとんど消え、また再び元気に日常生活を送れるようになっている。
 しかしながら一度こうした体験をすると、この先自分が本当に介護が必要になった時にはどうするか。真剣に考えるようになってきた。何しろ日本は慢性的な介護福祉人材の不足に直面しているからだ。そんな折に、外国人技技能実習生制度の「介護」人材の受け入れが解禁されたのだ。これは日本人の高齢者にとって朗報なのか。
 現在、「外国人技能実習制度」の受け入れ職種は74種あり、新たに「介護」の項目が加わったわけだが、外国人としてこの制度の適用を受けられるのは、中国、ベトナム、インドネシアなどアジア15か国に限定される。
 「介護職」に関していえば、これまで2008年に開始された経済連携協定(EPA)による受け入れシステムがすでに存在している。この制度では、これまで累計3,000人以上の外国人介護福祉士や看護師の候補生が日本で就労しており、さらに今年9月からは、外国人在留資格で「介護」が新たに制度として資格に組み込まれることになった。
 つまり、現在、外国人が日本の「介護職」に就労する場合、この3つの門戸が開放されたことになる。むろん条件面ではそれぞれ違いがあり、例えば就労期間を比較すると、技術実習生が3年(場合によっては5年)なのに対して、EPAは4年(介護福祉士の国家資格を取得すれば永続滞在できる)であり、在留資格者の場合は最長5年(更新もできる)とまちまちだ。
 また、明確に異なってくるのは日本語能力である。EPAと在留資格者が求められている条件は「日本語能力試験でおおよそN2以上の認定者」と高いレベルなのに、技術実習生の方は「入国時N4を所持し、1年後にN3を取得する義務が」と、かなり条件が緩和されている。
 ハードルを高くして思うような成果が上げられなかったEPA制度を鑑みて、外国人介護就労者をできるだけ多く受け入れたいとする日本の現状を考慮しての策かもしれないが、実はここに外国人介護士の受け入れ方に異論を唱える要素の一つがあるという見解も出てきている。

約38万人の介護福祉人材が不足に

高齢者の増加と少子化によって、介護現場の人手不足は年々深刻になってきた。2015年度の「介護労働実態調査」によれば、事業所が従業員の人手不足を感じている割合は61.3%と全体の6割を超えており、離職率は訪問介護員15.8%、介護職員14.9%を数えているという。また厚生労働省の2015年の推計でも、2025年には介護職員の需要見込みが253万人に対して、供給が予想される職員数が215万人程度と試算した。つまり差し引き約38万人の人手不足になる計算である。しかも現在、介護現場で就労する職員自身が抱く不満も浮き彫りになっている。
 内閣府発表の「高齢社会白書」(2016年版)の中で、「介護従事者が現時点で抱える悩み、不安、不満」についてのアンケート調査(対象は介護福祉士5,372人、複数回答)があるが、これによると、最大意見が「仕事内容のわりに賃金が低い」で全体の 51.6 %にも上った。次いで「人手が足りない」が50.3 %、以下、「有給休暇が取りにくい」43.9%、「身体的負担が大きい」39.3%、「業務に対する社会的評価が低い」35.6%、「精神的にきつい」31.8%、「休憩が取りにくい」30.4%、などの順になったが、こうした不満は以前から噴出していた介護業界の問題点でもあった。
 こうした深刻な問題に直面していた行政が打ち出した救援策がEPAからの人材確保だった。EPAとは自由貿易協定(FTA)のなかの連携項目で、協定締結国同士の経済取引を円滑化すること、経済活動における連携を強化することを目的に生まれた条約である。
 日本も多くの国とこのEPAに合意しているが、介護においては、2006年にフィリピンと、翌2007年にインドネシア、ベトナムと合意に達している。しかしやや見切り発車的にスタートしたこの介護人材の受け入れ制度は、合意当初は2年間で2000人の介護士・看護士の受け入れ予定だったが、開始から10年が経過した現在でも、その目標は達成できずにいる。介護士として就労する目的で来日した外国人は、介護施設で3年間働いたのち、介護福祉士の試験を受験し、それから介護の正職員になる流れだが、2013年の合格率は36%で、日本人の65%には遥かに及ばなかった。

緩和された介護実習生の 受け入れ条件

そこで浮上してきたのが受け入れ条件が緩和された「外国人介護技能実習生制度」である。
 これまでの技能実習生には「日本語能力試験3級」(N3)の合格者を前提としてきたが、前記したように「介護」では、一段階引き下げるN4を条件とする方向になった。N3は「日常会話がある程度は理解できるレベル」で、5段階のうちの上から3番目。N4になると日本語の理解力でいえばN3の半分以下とも言われる。
 「介護」技能実習生の場合は自国でN4レベルの日本語と、介護に関する基礎的な技能教育を習得してから来日することが基本条件。慢性的な人手不足に悩む介護現場にとっては一見、ありがたい制度に思えるが、介護現場では、デメリットの方が大きいのではと指摘する声もある。中でも強く懸念されるのはこの日本語能力の問題で、「言葉も文化も習慣も価値観も違う現場で、N4レベルで十分なコミュニケーションがとれるのか」という疑念が湧いているという。確かに、ハードルを下げれば、結果的に就労希望者は増え、人手不足の解消へと向かう可能性はある。しかし一方で、サービスの質という点で大きな不安が立ちはだかるのも事実だ。介護現場では、看護や医療も含めた専門用語が飛び交い、それをN4程度の日本語能力で対応できるのか?要介護高齢手くコミュニケーションを取っていけるのか?という不安が先に出てくる。たとえば、日本語といえども標準語地域ばかりではない。東北弁や九州弁を早口で喋るお年寄りの日本語に、標準語N4レベルではまず理解不可能だ。また、介護者の微妙な体調の変化や顔色、仕草の異常を、的確な日本語で伝えられるのか。

介護人材不足は日本だけの問題ではない

もう一つ世界的な規模でみれば、介護人材の不足は日本だけの問題ではなくなってきていることだ。特に高齢化が進む欧米でも深刻な問題になってきている。
 西欧諸国では今から20年くらい前から、東欧諸国から外国人の介護職員を受け入れはじめた。英国では介護職員5人に1人が外国人だといわれている。ドイツではついに日本と同じように東南アジアに採用の幅を広げているという。
 同じ仏教徒で人間性がいいとの評判から、介護実習生として最も期待されているミャンマーにしても、介護の問題は浮上している。
 ヤンゴンにある「Hninzigon Home for The Aged」という施設は、ミャンマー国内のすべての老人を受け入れる介護ホームだ。された。ミンドン王が健在だったころ彼女は裕福なMandalayのシルク商人の家に生まれた。そして47歳の時から、貧しく無力な人々のために、以後22年間に全国に5つの老人ホームを作る努力をした。
 生涯独身を通した敬虔な彼女は、世俗的な生活を放棄して62歳で尼僧になったが、1933年1月1日、65歳の時に、高齢者向けの施設として「Hninzigon Home」を設立した。
 当時の英国植民地政府は、彼女の人道精神に敬意を表し「Taing kyo Pyi kyo Saung - TPS」という称号を与えたほどだった。
 管理運営は、公共慈善団体に依存しており、運営資金は寄付、銀行預金の利息や貯蓄で賄われている。新しい4階建ての建物は、ケアを希望する高齢者を収容するために特別に改装された。基本的には有料ホームだが、彼ら自身または子供たちによって支払われる費用は適正で、専門の介護職員のケアが受けられるという。ミャンマーでは珍しい昇降用のリフトも常備されている。ちなみに高齢者ケアの施設のため、長年自主的に寄付を行い、80歳に達した後、高齢者管理委員会の名誉会員およびその家族には、優先的な入所資格が与えられるそうだ。
 ホームには現在240人の入所者がおり、男性100人、女性140人が暮らしている。家具付きの宿泊施設、衣類、毎日の食事、医療が提供されている。 一般的なダイニングルームとレクリエーションホールや男女別々の寮がある。
 毎日の食事は朝食5:30、ランチ10:30、ディナーは4:30で、著名な外科医、医師、専門家(退職した依然として実績のあるプロフェッショナル)で構成された健康監督委員会が、病院の機能を駆使して健康管理にあたっている。そのため24時間の在宅医と看護士が待機し、患者のケアにあたっている。病気になった患者は、必要に応じて一般および専門治療のためにヤンゴン総合病院に送られるそうだ。
 2008年からは基本的な看護と高齢者のための特別なケアに関する6ヶ月間のコースが設けられており、老人介護専門の看護サポートや老人医療の重要性について、一般の意識を高める活動も行っているという。
 こうした施設はまだ少ないが、今後ミャンマーでも介護福祉がクローズアップされてくることは間違いなく、そうなれば介護人材の不足は日本だけの問題ではなくなってくる。

問題解決には介護職の 待遇改善以外にない

こうした世界の現象を見ると、日本の介護現場を魅力的なものにしていかないと、たとえ一時的に介護就労希望の外国人が増えたとしても、国際的な人材確保競争に負けてしまう。
 そもそも技能実習制度では、これまでにも外国人実習生に対する賃金の未払いや待遇の悪さなのどの問題も出てきており、「外国人の労働力を安く買い叩く制度」といった風評も上がり、蒸発、逃亡する実習生も絶えないという。
 10月の末に、「外国人介護技能実習制度」の施行直前に、日弁連は東京都内でシンポジウムを開き、制度に詳しい弁護士らからは「人権問題を指摘される構造的な問題を残したまま、介護に拡大してはいけない」などと改善を求める意見が相次いだ。
 シンポジウムでは、実習生からの相談を受ける高井信也弁護士が「賃金水準が最低賃金並みにとどまり、不満があっても自由に転職できないなどの構造は変わっていない」と指摘があった。介護労働者の団体代表は、入国の条件となる日本語能力について「働く上での最低レベルにすぎず、介護の質を保証するには不安が残る」と強調した。
 こうした受け入れ制度にも問題は残るが、もうひとつ危惧されるのは、実習生の増加により、日本人介護職員の賃金が下がるのは、という懸念である。確かに、海外から安価な労働力が流入れば、その比較(一概に比較できないが)から日本人介護職員にまで余波が及ぶ可能性がゼロだとは否定できない。また安い労働力で人手不足を補おうとする消極的で臨時的な施策では、労働環境の改善にはつながらないという意見も多い。
 現在、外国人技能実習生のうち毎年全体の約3%にあたる約5000人が失綜ないしは行方になっているというデータがある。実習生の中には斡旋業者への借金を抱えている人も少なくなく、借金返済が滞り、より収入の多い仕事を求めて
失踪してしまうケースが多いのは周知の事実だ。
行政としても、斡旋業者に対しての細かい監督を行うのは現実的に厳しく、いまだに失綜者が後を絶たないというのが実態だ。しかし介護現場でこれをやられると、現場は本当にが混乱する。「介護」は高齢者の命を預かる仕事だけに、技能実習生が失綜する事態は何としても阻止しなければならない。
 技能実習制度による外国人介護士の受け入れについては、将来的に数万人規模にまで増やす計画設計がなされている。もちろん一方では日本人介護職員の人手不足を解消していかなければならないが、かりに数万人の外国人が介護現場で定着したとしても、約40万人近い人手不足を補完するにはいたらない。だから介護の担覚すべきなのだ。そこを曖昧にしたまま外国人に依存していくというのは大変危険なことである。 いずれにしても日本でこの介護職に人が集まらないという原因は、介護の現場で働く職員の労働環境の整備、特に重労働の割には賃金体系脆弱だということに尽きるのではないか。こうした特殊な仕事に対しては、政府予算のなかから福祉予算をさららに計上し、介護スタッフの待遇を改善していかなければ日本人、外国人を問わずこの人材不足は永久に解決していかない。

<介護技能実習生制度の要約>
(1)「介護」実習で認められる業務内容、
以下の必須業務を全業務時間の2分の1以上実施することが条件。
また、周辺業務は3分の1以下程度。
  ●必須業務:身体介護(入浴、食事、排泄、体位変換、移乗・移動等の介助等)
  ●関連業務:身体介護以外の支援(掃除、選択、調理等)
  ●周辺業務:その他(お知らせなどの掲示物の管理等)
(2) 受入機関の概要
  ●介護福祉国家試験で、「介護の実務経験」として認められている施設、機関。
  ●訪問系サービスではない。
  ●経営が一定程度安定している機関(原則として設立後3年を経過)
  ●実習指導員は、介護職で5年以上の経験を有する介護福祉士の有資格者
(3) その他
  ●受入人数枠を算出する従業員数は、介護業務者に限定。
  ●常勤職員数30人以下の受入機関の場合、常勤職員総数の10%まで。
  ●日本入国時に日本語能力試験N4の資格、さらに入国後1年以内にN3の合格が必須求。
(4) 介護福祉試験の受験資格の認定に関する介護等の業務の範囲
●老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業
●養護老人ホーム 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 介護療養型医療施設
老人デイサービスセンター 老人短期入所施設(介護予防)
通所介護(介護予防)短期入所生活介護 (介護予防)通所リハビリテーション(介護予防)
短期入所療養介護(介護予防) 認知症対応型通所介護(介護予防) 
認知症対応型共同生活介護 軽費老人ホーム 有料老人ホーム(介護予防) 
訪問介護 介護予防)訪問入浴介護

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