◎発見|Discovery 熱帯モンスーン「Komen」被災地への支援活動 

Ayeyarwaddy管区 ローカダー村周辺 「災害時には正確な情報の把握が重要」

目次

 8月3日、ミャンマー政府は、7月27日から6日間で1,000mmを超える熱帯モンスーン「Komen」の降雨による洪水被害がサガイン、ラカイン、チン、マグウェイといったミャンマー北西部に及んだと発表した。国連は8月10日現在の死者・行方不明者は96人、被災者は約59万人に達するとの見解を示した。2008年の「ナルギスサイクロン」とは被害規模は異なるものの、ミャンマーとしては非常事態であることは間違いない。しかし、その割には、正確な被害状況が伝わってこない。いずれにしても、ヤンゴンプレスでは被災者の方がたへの救援活動を決意し、先月は2回に分けて支援物資をお届けした。今後も状況を把握して活動を継続する予定である。

「公助」の充実が被害拡大を防げるか

 今回の洪水災害(災害全体の名称として「Komen」災害と名付られた)に対して、ヤンゴンプレスでは、まず被災者への義援金を募り、弊紙事務所があるAsia Plaza Hotelほかの支援チームとともに、被害地に届ける決断した。当初は人口251,000人(2014センサス)の「ピイPYAY」という国内7番目の町に行く予定であったが、途中で変更になった。理由は、「PYAY」にはすでに多くの寄付が集まり、援助物資が届いているためであった。そこでまだ不足していると思われるエヤワディ管区ヒンタダ県レーミャナー郡ローカダー村へ行先を変更した。
 ローカダー村に着くと、まず「テリミンガラ僧院」に向かった。ミャンマーの場合、緊急時には僧院がこのような緊急指令本部になるケースが多いからだ。僧院の入口には、被害状況が貼られてあった。しかし、どなたが責任者であるのか?情報が何時のものなのか?何が足りないのか?緊急連絡先は?などの情報がない。また援助物資は何か、誰から届けられて、どこに配られたか?といった基本的な記録もないようだ。わかったことは、トラックから運び出された救援物資は、船に運びこまれ、そのまま浸水家屋に送られているという事実だった。
 被災地の住宅は写真でもわかるように、大半が竹でできた家屋であり、電気の配線もない。従って、かりに床上浸水になったとしても、家電製品がないので漏電、破損の心配はない。ただ、水が引くまでの期間の食料確保、健康維持が大事で、医薬品などは欠かせない。
田圃の稲が枯れるなどの被害は深刻だが、コメは年3回収穫できる国である。水が引き、種を撒けば4か月で米の収穫はできる。

逆説的な言い方だが、物が無い社会は、「sustainable life」、つまり持続可能な社会となっているかもしれない。その一旦を垣間見た。漁師たちが、蟹かごを肩に担ぎながら、意外に明るい表情で漁から戻ってきたのだ。そして自慢げに、蟹を見せたくれた。不謹慎な表現かも知れぬが、毎年繰り返される水災害に対しては、我々が考える以上の自助努力が出来ているのではと、現地を歩いて感じた。むろん、「公助」を充実することでより生活がよくなるのは当然だ。だから「公助」のメカ二ズムがある程度確立されれば、被害の拡大を抑えることができるのは必然で、今後は、日本の災害対策事例を現地の人たちに教える活動を考えてもいいのではないかと感じた。
 余談だが、被災地を歩いていると、藤沢周平さんの「蝉しぐれ」という小説のなかで、主人公の牧助左衛門が金井村の田畑が洪水にならぬように、上流の堤防を決壊させたというくだりを思い出した。川を制する者は、天下を制すると言われた江戸時代、今の日本は暴れ川を制して繁栄することができた。それらの長い経験、苦難をミャンマーに伝えていけたらと、感じた。いずれにしても片道10数時間のトラックでの救援活動は大変であった、
 しかし、甚大な被害を受けているのは北部のチン州やザガインといった地方らしい。こうした被災地への支援も行いたいが、何しろ正確な情報がない。万が一近くの場所に行けたとしても、道路が水で遮断されていたりしたら無駄足になる。災害時にはいかに情報が重要かを思い知らされた。

Tags
Show More