◎第3回 導│ミャンマーに貢献する日本人

観光地として発展途上のベイで 小さな連鎖から未来へ繋がる事を

花澤 光希 Mitsuki Hanazawa グリーンネコ(株)「Green Neco Co., Ltd.」 オーナー

観光業によって環境保護を促し、 伝統文化を世界に紹介していきたい

ミャンマー南部の町ベイを基点に、メルギー諸島の島巡りや南部の都市観光を始めとしたツアーを売る会社を立ち上げて、今ようやく1年半経った。パートナーであるミャンマー人のタムは相変わらず凄まじい人間力というか、バイタリティの塊というか、とにかく誰とでもすぐ仲良くなる、ハッピーで素直で几帳面で信頼のおける人間だ。あいつはマジで絵にかいたような「いいヤツ」である。  ここで正直に言うと、最初の頃の私は南部の町ベイやメルギー諸島に急成長の匂いを感じて、お金儲けの為にここで何かやってみようと思っていた。だから土地やビーチを買い、今の事業を始めた。  だけど、いざ現地に住んでタムと一緒に仕事をしていくうちに、ケチな金儲けで満足しちゃ意味がないと思うようになった。自分が今お世話になっているこのベイという町、メルギー諸島、そしてそこで静かな暮らしを営む離村の人々――これからも彼らと末永く付き合っていくには、どうすればいいんだろう。自分がご飯を食べて酒を飲んで楽しく生きるための小銭を稼ぐのは簡単だけど、それだけじゃ未来が無くなってしまう気がした。  そう思い始めた頃からなぜか、世界的な環境保護団体のミャンマー担当や、CBTプロジェクト(※後で詳しく書くよ)の視察や、有名な洞窟調査チームに弊社のアレンジメントを使っていただくことが増えた。 南部の専属旅行会社として契約している団体もある。私がどうすればいいのかボヤボヤ考えている間に、タムがそういう人たちとの縁を惹きつけて来たのである。  私たちが取り組んでいる「サステイナブルツーリズム」の理想として、観光業が自然環境や伝統文化を破壊するのではなく、むしろ観光業によって環境保護を促し、伝統文化を世界に紹介するものであるべきだと思う。

また、観光客が人々の生活をただ一方的に見学するのではなく、観光客と地元の人々がふれあう場も作りたいと考えている。  今年3月、ベイのMinistry of InformationとMinistry of Educationという役所が主催した「ベイ周辺の離村の子供に英語の文法&英会話を教えるボランティア」という活動のサポートを弊社でやらせていただいた。その期間中、うちのお客さんで興味を持った数名の方が授業に何度か参加し、離村の子供たちと外国人観光客が英語の歌や簡単な英会話で交流する場ができた。「こういう活動がやりたいな」と思っている時に声をかけて下さる人がいることに、心から感謝している。クラスの修了式で主催者の役人さんも言ってたけど、子供の未来は町の未来で、大きく見たらそれは国の未来に繋がる。  この他にも、お客さんの希望により市内観光の途中でベイの孤児院に立ち寄ることもある。観光客が文房具や洋服を寄付するだけでなく、孤児院の子供たちと外国人が交流するということに意味があると私は思っている。子供たちは授業で習った英語をはにかみながら頑張って喋ってみたり、お客さんは知っている範囲のミャンマー語を一生懸命話してみたり。お互いに言葉は足りていなくても、一緒にサッカーをしたりお絵かきしている様子を見ていると、子供たちもお客さんも本当に楽しそうに遊んでいる。外国人観光客が激増したベイという町の離村や孤児院で暮らす子供が、こうして生の英語に触れる機会を持つことは、将来彼らの役に立つかもしれない。そう考えるとワクワクするし、これは外国人相手の商売をしているからこそできるボランティアの形だと思う。  こんな田舎で小さな旅行会社をやっていて、私にできることなんて本当に少ししかないと思うからこそ、チャンスを貰ったときは全力でやりたいと思っている。  ところで話は変わるけど、今年の5月、私とタムはカヤー州のロイコーへ行ってきた。ベイでも最近取り組みが始まっている「CBTプロジェクト」の様子を見学するためだ。CBTというのは Community Based Tourismの略で、地元民の収益、伝統文化の保守、環境保護などを主な目的とし、将来的に持続性のある観光業を発展させるための活動である。現在のロイコーは非常に理想的なCBTプロジェクトを行っている、と昨年12月にダウェイで行われたCBTの会議で聞いて、ずっと気になっていた。ロイコーでは、町の周辺にある少数民族のカヤン族(首長族)の村を観光客が見学 する際、各民家を訪れるたびに家の人に直接3,000ks~のお礼を渡すというルールがCBTで決められている。タイ側ミャンマー国境付近では「Human Zoo(人間動物園)」と批判されるほど非人道的なやり方で首長族の女性を観光資源として利用するビジネスが問題になっているが、ロイコー周辺の村ではカヤン族(首長族)の女性が個人の意思で自宅を観光客に開放し、糸紡ぎや機織り、伝統音楽の演奏など各自の特技を披露したり、自分が作った工芸品を販売することで、観光客から直接収入を得ることができる。  この制度ができてから、タイの観光地へ出稼ぎに行っていたカヤン女性も、自分の村に戻って家族と暮らしながら仕事をすることができるようになった。  南部のベイにも、メルギー諸島の離島に住む少数民族のモーケン族(海洋民族)の集落へ観光客を連れて行くツアーがあるけれど、観光客とモーケン族の人々がどのように付き合っていくべきか、まだしっかりとした方向性は決まっていない。観光客が少なかった頃は、集落にお邪魔する代わりに、子供たちのための文房具やお菓子などをお礼に渡すというやり方をしていたけれど、現在、ハイシーズンには何十人もの観光客を乗せたスピードボートが集落を訪れる事態になっている。そこで観光客側が彼らにただお土産やお金を渡すのではなく、何か別の方法でモーケン族の人々が観光客から利益を得られる状況を作らなければならない。  まだ観光地として発展途上のベイには、課題がたくさんある。私1人の力で何かができるわけじゃないけど、渦中にある1つの歯車という立場から情報を発信することはできる。それを読んでベイに遊びに来たお客さんが、現地でどんな過ごし方をするのか。何を感じて、それをどんな言葉で周囲の人に伝えていくのか。そういう小さな連鎖から、ベイの未来が良くなっていけばいいなと思う。  ということで、海鮮料理も安くて美味しいし、いい町だから皆ベイに遊びにきてね♡

<花澤 光希  略歴> 本名 花澤光希。1994年3月30日東京都世田谷区生まれ。中学をギリギリ卒業後、様々な仕事を経て邦楽ロック雑誌の編集会社に勤務。退職後、タイ語留学でバンコクに移住するも、クラスには2度しか顔を出さずにタニヤのカラオケ店で通訳のお手伝いをしてタイ語を学ぶ。2014年3月よりミャンマー南部ベイに移住し、2016年5月に現地旅行会社Green Neco Travelを設立。 連絡先:h.mitsuking@gmail.com ・ブログ「南部Myeikでのミャンマー暮らし」http://myanmartravel.blog.fc2.com/ ・インスタmyeik_myanmar_mitsuki ・Green Neco Co., Ltd.(グリーンネコ株式会社)http://www.greenneco.asia/ (No.8/B) Myawttyi St., MyothitTadarOo Qtr., Myeik, Myanmar

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