2018年 新春特別企画 安倍晋三日本国内閣総理大臣への書面インタビュー

「今後、日本はミャンマーとの関係及び支援をどのように継続、構築していくのか」内外に難題が山積みし、しかも昨年末の繁忙期に、安倍晋三内閣総理大臣は弊紙の書面インタビューに快く、そして迅速に対応してくださった。文中にもあるように、総理のミャンマーへの思い入れの強さと関心度の高さの表れだろう。ご尽力いただいた在ミャンマー日本国大使館及び日本国外務省及び一般社団法人日本ミャンマー文化経済交流協会の宇野治会長ら関係者の方々に改めて感謝の意を表したい。

目次

「今後、日本はミャンマーとの関係及び支援をどのように継続、構築していくのか」

YGP 民政移管が進んだミャンマーは,先の大戦時のビルマの時代から日本との関係が深い国です。信仰心厚い国民は非常に親日的で,日本がODAなどで多額の支援をしていることなどから,対日感情も非常によく,ここ数年はティラワSEZをはじめ,日系企業の進出も目覚ましいものがあります。そこで,まず総理からミャンマー国民に向けて新しい年の幕開けに際して一言メーセージをお願いいたします。

総理 明けましておめでとうございます。1月4日に独立70周年を迎えるミャンマーの皆様に,心からお祝い申し上げます。
 2年前,ミャンマーは歴史的な政治転換を遂げました。本年は,ミャンマーがその民主的な国造りへの道筋を定着させるための要の年になるでしょう。ティラワは目覚ましい発展を見せています。
 日本は,「自由で開かれたインド太平洋戦略」の下,成長著しいアジアと潜在力溢れる中東・アフリカを結び付け,地域全体の安定と繁栄に貢献していく考えです。ミャンマーは,国の西側が海洋に面するなど,この戦略の中で,これまでにない発展の可能性を秘めています。 日本は,ミャンマーとの伝統的な友好関係を礎に,ミャンマーに寄り添いながら,アウン・サン・スー・チー国家最高顧問が主導する民主的国造りをこれからも官民を挙げて最大限支援していきます。今年は,日本で日本・メコン首脳会議を開催します。その機会に,国家最高顧問を日本にお迎えできることを楽しみにしています。
 ミャンマーに在留する日本人の皆様,そしてミャンマーの皆様が益々ご活躍される年になることを祈念します。

YGP 安倍総理ご自身とのミャンマーとの関わりについてお聞かせ下さい。

総理 私のミャンマーとの最初の関わりは,父・安倍晋太郎が外務大臣として当時のビルマを訪問した際に,秘書官として同行した時でした。父は私に対して,戦争中の多くの出来事があったにも拘わらず,ミャンマーの人々が温かい心で日本人を迎え入れてくれていることを忘れてはならないと言いました。
 ミャンマーを一度訪問した人は,その魅力に虜になると言いますが,私も,最初の訪問の時からミャンマーが大好きになり,「筋金入り」のミャンマーファンになりました。
 私の妻・昭恵にも,ミャンマーの方々との長く深いお付き合いがあります。2006年からは,ミャンマーの寺子屋支援を続けています。そして,ついに,妻・昭恵が日本の大学院で,ミャンマーの寺子屋教育についての修士論文を書き上げた時は,私も驚きました。

YGP 12月14日にミャンマーのティン・チョウ大統領が来日して,総理と会談されましたが,大統領とはどのような会談をなさったのか。差しつかえない範囲内でお教えください。

総理 ミャンマーの新政権発足以来,アウン・サン・スー・チー国家最高顧問とティン・チョウ大統領が訪日されました。これらは,二国間関係を更にステップ・アップさせる絶好の機会になりました。
 2016年11月にアウン・サン・スー・チー国家最高顧問にお会いした際には,私から,ミャンマー政府が進めているミャンマーの民主化の定着,国民和解と和平プロセス,経済発展のための努力を,日本は官民を挙げて支えていくことをお伝えしました。アウン・サン・スー・チー国家最高顧問とは,昨年11月にもお会いし,経済協力やラカイン州情勢等について意見交換しました。
 昨年12月,ティン・チョウ大統領も日本を訪問されました。JICAの研修で来日して以来の40年振りの訪日ということでした。会談では,ミャンマーの民主的国造りのための日本の支援策や,ラカイン州情勢,国際情勢などについても率直に意見交換を行いました。その中で,私からは,ミャンマー国民の間で,日本語学習熱が高まっている現状を踏まえ,日本語教師育成への協力等を通じて,日本語学習支援を強化していくことや,国際交流基金と日本サッカー協会が,ミャンマー・サッカー・ユース・アカデミーへ派遣している指導者についてもお話ししました。現在,マンダレーへ派遣中のコーチに加え,2018年以降,女子代表監督1名を含む計3名の派遣を準備中ですので,在留邦人の皆様には応援を宜しくお願いします。また,ラカイン州情勢については,避難民の帰還等必要な措置をとることを期待している旨述べつつ,ラカイン州での道路舗装,送電線整備,15校程度の学校建設を迅速に行う旨伝えました。
 さらに,夕食会の際には,ティン・チョウ大統領から,お父上が1970年代に大阪外国語大学のビルマ語客員教授として教鞭をとられ,日ビルマ語辞書の編纂にも関わられた話や,スー・スー・ルイン大統領夫人のお父上が日本の旧陸軍士官学校に留学されていた話なども伺い,心温まる時間を過ごしました。夕食会には,防衛研究所や自衛隊幹部学校へのミャンマー国軍からの留学生も出席してくれました。

YGP 11月1日から「技能実習生制度」の介護実習生の受け入れが始まりました。正直で年長者を敬う習慣がある,ミャンマー人に対する期待が高まっていますが,この制度で日本における技能実習を目指すミャンマーの若者に総理から注意点などを含め一言アドバイスをお願いします。

総理 今後,高齢化が進むアジアにおいては,医療・介護等の高齢者に関わるサービスに従事する人材が随所で求められ,このヤンゴンプレスの読者の方々のように未来ある若者への期待が益々高まってまいります。介護分野に関心を持たれ,留学生として,または技能実習生として来日されましたら,日本がこれまで培った経験から,レベルの高い介護技術を身に着けて頂けるよう,また,長期的な視点で皆さんのキャリアパスに繋がるような日本語能力を取得して頂けるように,日本政府として「アジア健康構想」に基づき,支援策等を用意しています。こうした仕組みも活用し,将来,日本で介護技術を学ばれた皆さんが,リーダーとしてミャンマーの国造りに貢献されたり,アジアの国々でご活躍されたりすることを期待しています。

YGP 戦後,日本が敗戦で疲弊していた時,米などを提供して日本を支援してくれたビルマへの恩義は忘れることができません。当時のビルマはASEAN有数のGDPを誇っていました。ですから今後将来的に,再び6億人のマーケットがあるASEANの中心的な役割を果たすときが来ると確信しています。そのためには今,ミャンマー国民に向けて総理からアドバイスするとしたら,何をすべきか,何が大事なのか。 

総理 ミャンマーは可能性を持つ国です。
 2013年5月,私は日本の総理大臣として36年振りにミャンマーを訪問しました。その際,ティラワ経済特区予定地を視察しましたが,当時はまだ広大な土地があるだけでした。その経済特区は,今日までの短期間の間で,日本とミャンマーの官民による協力の象徴と言われるまでに発展しました。今現在,ティラワ経済特区には,世界から88社が進出を決め,既に37社が稼働しています。
 ミャンマーの経済成長の鍵は,ティラワ経済特区のような成功例を他の地域にも拡大し,ヤンゴンの都市開発を進め,地方と都市の均衡ある成長を実現することです。そのためには,ミャンマー政府がより良い投資環境を整備し,ミャンマーの人々の人材育成を行っていくことも必要です。特に,子供達の教育も含めた人材育成は,将来のミャンマーのために非常に重要です。ミャンマーの人々は,優秀でかつ勤勉との定評があります。限られた資源であっても,人に投資する。この精神を常に忘れないでいただきたい。日本としても,こういった支援を引き続き行っていきたいと思います。

YGP 弊紙「ヤンゴンプレス」は,前政権時代の2013年にメディアの検閲廃止を施行したミャンマー政府から発行許可を頂き,まもなく創刊5周年を迎えます。現在ミャンマー語版も発行しております。日本とミャンマーを結ぶ情報ツールとしてミャンマー政府,特に情報通信省とも信頼関係を築いております。
 来年3月から老舗のMyanmarTimesとも提携します。同紙は将来日本語バージョンを刊行する予定だといいます。ミャンマー初の現地日本語メディアである弊紙の責任も重大だと考えております。そこで,最後に総理から一言弊紙「ヤンゴンプレス」への激励またはメーセージを頂きたいのですが。

総理 ヤンゴンプレス創刊5周年,おめでとうございます。これまで,在留邦人の皆様の貴重な情報源の一つとして,ミャンマーの激動の時代を伝えてこられたことに敬意を表します。ヤンゴンの在留邦人もこの5年間で約4倍と激増しており,より多様な情報が求められるようになるでしょう。今後も,現地ならではの視点からの取材と発信を続けていただき,これからの5年間,更に続く5年間に向けて,ミャンマーに在留する日本人の皆様とミャンマー人の皆様を結ぶ絆として,益々の御発展を期待致します。

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